腸腰筋(ちょうようきん)の基礎とトレーニング&ケア

投稿日:2025年11月26日  カテゴリー:骨格筋

腸腰筋(ちょうようきん)の基礎とトレーニング&ケア

腸腰筋は、股関節(こかんせつ)を曲げる動きの中心となる、とても重要な筋肉群です。
走る・歩く・キックする・姿勢を保つなど、あらゆる動作に関わっており、スポーツだけでなく日常生活の質にも大きく影響します。

1. 腸腰筋の基本情報

1-1. 位置と構造

  • 腸腰筋は 大腰筋(だいようきん)小腰筋(しょうようきん)※人によっては欠如腸骨筋(ちょうこつきん) の総称。
  • 腰の骨(腰椎)の前側〜骨盤の内側を通り、太ももの骨(大腿骨の小転子)に付着する。
  • 体の前面の深い位置にあるため、外からは見えない「インナーマッスル(深層筋)」として働く。

1-2. 主な働き

  • 股関節を曲げる(股関節屈曲):ももを持ち上げる動き。歩行・ランニング・階段上りなどで常に働く。
  • 体幹を前に倒す・起こす補助:仰向けから起き上がるときなど、腹筋と協力して上体を動かす。
  • 姿勢の安定:骨盤と腰椎をつなぎ、立位や座位で上半身を安定させる。
  • キック動作の加速:サッカーなどで太ももを素早く前に振り出すときに強く働く。

1-3. 関連する日常動作・スポーツ動作

  • 歩く・走る・階段を上る・早歩き
  • 椅子から立ち上がる、仰向けから起き上がる
  • サッカーのダッシュ・キック・切り返し
  • 短距離走やジャンプ競技でのスタートダッシュ
  • 長時間の座り姿勢で固まりやすく、腰痛や姿勢不良の一因になることもある

2. 腸腰筋の筋力トレーニング種目

腸腰筋は、「素早くももを上げる力」「体幹の安定」に直結します。
下記の種目を、初級から段階的に取り入れていきましょう。

レベル 種目名 やり方のポイント 注意点
初級 仰向けニーアップ(シングルレッグマーチ) 仰向けで膝を立て、軽くお腹に力を入れて腰を安定させる。
片脚ずつ膝を90度くらいまで持ち上げ、ゆっくり下ろす。
腰が反りすぎない範囲で、左右交互に15〜20回×2〜3セット。
腰に痛みが出る場合は、膝の高さを低めに調整する。
初級 立位ニーアップ(もも上げ) 片脚立ちになり、反対側の膝を90度程度まで持ち上げてキープ。
1〜3秒止めてから下ろし、10〜15回。左右2〜3セット。
体幹をまっすぐ保ち、上半身が後ろに倒れないようにする。
バランスが不安な場合は、壁や椅子に軽く手を添えて行う。
中級 ハンギング・レッグレイズ(またはニーレイズ) 懸垂バーにつかまり、体をまっすぐ伸ばす。
膝を曲げて胸に近づける(ニーレイズ)か、脚を伸ばしたまま前方に上げる(レッグレイズ)。
8〜12回×2〜3セット。
反動で脚を振り上げない。腰ではなく股関節から動かすイメージで。
中級 チューブ付きニーアップ(抵抗もも上げ) 足首にチューブやケーブルをつけ、立位で膝を持ち上げる。
ゆっくり引き上げ、コントロールしながら戻す。10〜15回×2〜3セット。
骨盤が前に倒れすぎないよう、お腹に軽く力を入れて姿勢を安定させる。
中〜上級 Vシットアップ(腸腰筋+腹筋) 仰向けで手足を伸ばし、上体と脚を同時に持ち上げてV字を作る。
8〜12回×2〜3セット。難しい場合は膝を曲げて行う。
勢いで起き上がらず、腰を痛めない範囲で可動域を調整する。
上級 スプリントドリル(Aスキップ) その場で軽く跳ねながら、ももをリズミカルに高く引き上げるドリル。
20〜30m、または20〜30秒×3〜5本。
腸腰筋とハムストリングスの連携を高める。
十分なウォームアップ後に実施。着地はソフトに行い、膝への衝撃を減らす。

3. ストレッチとケアの方法

腸腰筋は、長時間の座位で短縮しやすく、硬くなると腰痛や姿勢不良の原因になりやすい筋肉です。
動的ストレッチ(ウォームアップ)と静的ストレッチ(クールダウン)、セルフケアを組み合わせて、柔軟性と機能を保ちましょう。

3-1. 動的ストレッチ(ウォームアップ向け)

種目名 方法 ポイント
ウォーキング・ランジ(前進ランジ) 大きく一歩踏み出し、後ろ脚の股関節の前側を伸ばす。
そのまま前足で地面を押して立ち上がり、反対脚で続ける。10〜20歩。
上半身を起こし、後ろ脚の股関節前面に「伸び感」が出る範囲で行う。
ハイニー・マーチ(その場もも上げ) その場で歩くようにももを高く上げる。
腕も振りながら、20〜30回程度リズムよく行う。
腰を反らず、軽く前傾気味の姿勢で股関節から脚を持ち上げる。
レッグスイング(前後スイング) 壁や支えにつかまり、片脚を前後に振る。
小さな振り幅から始め、徐々に可動域を広げる。片脚20〜30回。
振りすぎて腰を反らないように注意。股関節の付け根からなめらかに動かす。

3-2. 静的ストレッチ(クールダウン・柔軟性向上)

種目名 方法 目安時間・ポイント
ハーフニーリング・ヒップフレクサーストレッチ 片膝立ちになり、前脚は膝を90度に曲げて足裏を床につける。
骨盤を軽く後傾させ(おへそを軽く引き上げる意識)、体ごと前方へ少し移動させる。
後ろ脚の股関節前面にストレッチを感じたらキープ。
20〜30秒キープ×2〜3セット。腰を反らせず、お尻に軽く力を入れると腸腰筋に入りやすい。
ベッド端ストレッチ(トーマスストレッチ応用) ベッドや台の端に仰向けになり、片膝を胸の方へ抱える。
反対側の脚は力を抜いて自然に下へ垂らし、股関節前面を伸ばす。
20〜30秒キープ。腰が反りすぎる場合は、腹部に軽く力を入れて調整する。
寝ながらツイスト+腸腰筋ストレッチ 仰向けで片膝を立て、その膝を反対側へ倒して体をひねる。
上側の脚を少し後方へ引くようにすると、腸腰筋にも伸び感が出る。
20〜30秒キープ。痛みが出ない範囲で、リラックスして呼吸を続ける。
ボールやフォームローラーによるセルフマッサージ 仰向けまたは横向きで、骨盤前面〜おへその斜め下あたりに小さめのボールを当てる。
体重を軽く乗せ、呼吸に合わせてじんわり圧をかける。
10〜20秒を数カ所。強く押しすぎないこと。内臓に近い部位のため、違和感があれば中止する。

4. 安全に腸腰筋を鍛え・伸ばすためのポイント

  • 長時間座っている生活では腸腰筋が短くなりやすいため、こまめに立ち上がって軽いストレッチを行う。
  • トレーニング前には必ず動的ストレッチで股関節を温めてから負荷をかける。
  • 腰や股関節に鋭い痛みが出る場合は、すぐに中止し、専門家や医療機関に相談する。
  • 腸腰筋だけでなく、腹筋群・お尻の筋肉・もも裏の筋肉もバランスよく鍛えることで、股関節と腰の安定性が高まる。

腸腰筋は、見た目には分かりにくいものの、姿勢・走力・キック力など、パフォーマンスの土台を支える重要なインナーマッスルです。
適切なトレーニングとストレッチを継続し、しなやかで強い股関節を目指していきましょう。

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