直接フリーキックと間接フリーキックの違い — JFA/IFAB 競技規則の要点
再開方法の根本的な違い（得点可否・主審シグナル・適用事例・実施手順）を、現場で使える形で整理する。
1. コアの違い（まず結論）
| 項目 | 直接フリーキック（DFK） | 間接フリーキック（IFK） |
|---|---|---|
| 直接得点 | 相手ゴールへ直接得点可 | 相手ゴールへ直接得点不可（誰かが触れてからなら可） |
| 自分のゴールへ直接 | 得点無効 → 相手のコーナーキック | 得点無効 → 相手のコーナーキック |
| 主審のシグナル | 通常は腕を上げない | 腕を垂直に挙上し、ボールが他競技者に触れるまで保持 |
| 典型的な理由 | 接触系反則（蹴る/つまずかせる/押す/打つ/タックルの接触/ホールディング/ハンド/つば吐き 等） | 非接触系・手続違反（危険な方法/進路妨害※接触なし/GK違反/オフサイド/二度触れ/異議のみ など） |
2. どんなときに与えられるか（代表例）
直接フリーキック（DFK）になる主な行為
- 蹴る・蹴ろうとする、つまずかせる、押す、打つ/打とうとする、チャージ/タックルで接触
- ホールディング（つかむ、ユニフォームをつかむ 等）
- ハンドの反則
- つば吐きや物を投げ当てる 等
※ 守備側のDFK対象反則が自陣ペナルティーエリア内で起きた場合はPK。
間接フリーキック（IFK）になる主な行為
- 危険な方法でのプレー（PIADM）：接触はないが相手を危険にさらす（ハイキック、倒れてボールを覆う 等）
- 進路妨害（インピーディング）：ボールへプレーする意図なく身体で進路を遮る（接触なし）
- ゴールキーパーの違反：6秒以上保持、味方が意図的に足で蹴ったボールを手で扱う（いわゆるバックパス）、味方のスローインを直接手で扱う など
- オフサイド（関与発生地点からIFK）
- 二度触れ：リスタートのキッカーが他者の接触前に再度触れる
- 言動のみの違反：異議や再開遅延等（懲戒は別、再開はIFK）
3. 実施手順（共通と相違）
- ボールは所定地点に静止。主審の合図が必要な場合は合図後。
- 距離：相手は少なくとも9.15m。壁が3人以上の守備側人壁には、攻撃側は1m以上離れる。
- インプレー：ボールが蹴られて明確に動いた瞬間（自陣PA内で守備側に与えられたFKは、相手がPA外にいることが条件）。
- 二度触れ禁止：他競技者に触れる前の再接触はIFK（手で触れた場合はDFK（ハンド））。
4. ペナルティーエリア内の特則
- 守備側に与えられたFK（自陣PA内）：相手はPA外に退避。ボールは蹴って動けばインプレー。
- 攻撃側に与えられたIFK（相手PA内）：キック地点は原則反則地点。相手は9.15m離れるが、ゴールライン上での守備も可（ポスト間・バー下の範囲）。
- 相手のゴールエリア内（攻撃側IFK）：ゴールエリアライン上（ゴールラインに平行）で最も近い地点に移して実施。
- 自陣ゴールエリア内（守備側FK）：ゴールエリア内の任意の地点から実施可。
5. 笛とシグナルの運用
- IFK：主審は腕を垂直に挙上し、ボールが他者に触れる/アウト/得点まで保持。
- DFK：通常は挙上なし。マネジメントが必要な場合は笛で統制。
- クイックリスタート：警告や交代、負傷対応などの管理が不要で安全なら許可される。
6. 現場で迷いやすいポイント
- 接触の有無が判断の第一歩：接触あり→多くはDFK。接触なし→IFKの可能性。
- オフサイドの再開は常にIFK。
- GK違反（6秒・バックパス・スローイン直キャッチ）はIFK。
- DFK対象の守備反則がPA内ならPKで、DFK自体は選択されない。
7. 早見表（再開・カードの関係）
| 類型 | 代表例 | 再開 | カード目安 |
|---|---|---|---|
| 接触系反則 | 蹴る/押す/打つ/タックル接触/ホールディング/ハンド/つば吐き | DFK（守備PA内はPK） | 不注意=なし／無謀=黄／過度の力・暴力=赤 |
| 非接触の危険 | 危険な方法、接触なしの進路妨害 | IFK | 状況で黄 |
| 手続違反等 | オフサイド、二度触れ、GK違反、言動のみ | IFK | 遅延/異議は黄の対象 |
8. チェックリスト（実務）
- 接触の有無→ DFK系かIFK系か。
- 場所→ 守備PA内のDFK対象ならPK／攻撃側IFKのPA内特則。
- 距離・位置→ 9.15mと壁1m、相手のPA外待機。
- 主審シグナル→ IFKは腕挙上を維持。
- 二度触れ・遅延→ IFKや懲戒の対象。