子どもが「サッカー辞めたい」と言ったときの保護者の対応 ― 共感と対話の視点から

投稿日:2025年11月29日  カテゴリー:サッカーを通じて育む親子の関係性強化術

子どもが「サッカー辞めたい」と言ったときの保護者の対応 ― 共感と対話の視点から

長くサッカーを続けていても、ある日ふと子どもから
「サッカー辞めたい」「もうやりたくない」
と言われることがあります。

その一言は、保護者にとってショックであり、不安や戸惑いを生むものです。
ただ、この場面は「親子の信頼を深めるチャンス」にもなります。
ここでは、共感と対話を軸に、どのように関わるとよいかを具体的に整理します。

1. まず知っておきたい「子どもの辞めたい」の裏側

「辞めたい」という言葉の裏には、さまざまな本音が隠れています。

  • 試合で上手くいかず、自信を失っている
  • コーチや仲間、チームの雰囲気など、人間関係に悩んでいる
  • 勉強や他の習い事との両立が難しく、心身ともに疲れている
  • 「親や周りの期待が重い」と感じて、プレッシャーになっている
  • 単純に、別のことに興味が移っている

つまり、「サッカーそのものが嫌いになった」のか、
「今の環境や状況がつらい」のかで、対応は大きく変わってきます。
その違いを知るためにも、最初の反応がとても重要です。

2. よくある対応と、望ましい対応の違い

子どもの言葉 ありがちな大人の反応 共感と対話に基づく望ましい対応
「サッカーもう辞めたい」 「せっかくここまで続けたのに何言ってるの」
「甘えるな、最後までやりなさい」
「お金も時間もかけてるのに」
「そう思うくらい、今つらいんだね」
「辞めたいって思うくらい、どんなことがあったのか教えてくれる?」
「まずは気持ちを聞かせてほしいな」
「試合に出してもらえないから意味ない」 「もっと頑張れば出してもらえるでしょ」
「みんな我慢して頑張ってるんだよ」
「試合に出られないのは本当に悔しいよね」
「いつ頃からそう感じているの?」
「自分では、理由はどんなところにあると思う?」
「もう楽しくない」 「楽しくなくても続けることが大事なんだ」
「そんなこと言ってたら何も続かないよ」
「前は楽しそうだったけど、最近は違うんだね」
「いつくらいから楽しくなくなってきた感じ?」
「楽しかった頃と、何が一番変わったと思う?」

大切なのは、すぐに説得せず、まずは一度「受け止める」ことです。
「辞めたい」という言葉を否定すると、子どもは本音を話しにくくなります。

3. Step1:すぐに結論を出さず、気持ちをそのまま受け止める

3-1. 最初にかけたい一言

最初の反応は、子どもの心を開かせる鍵になります。

  • 「そう思うくらい、今つらいんだね」
  • 「まずは教えてくれてありがとう」
  • 「急いで答えを出さなくていいから、ゆっくり話を聞かせて」

ここでのポイントは、「辞めたい」という気持ちの是非を評価しないことです。
正しい・間違っているかではなく、「今の心の状態」を共有することが大切です。

3-2. 感情を言葉にしてあげる

子ども自身がうまく言語化できていない場合、保護者が補ってあげると整理しやすくなります。

  • 「最近、試合から帰ってくると元気がなかったから、やっぱりしんどかったんだね」
  • 「コーチの言葉がきつく感じていたのかな?」
  • 「うまくいかないことが続いて、疲れてしまったのかもしれないね」

子どもの表情や様子を見ながら、
「こう感じているのかな?」と、推測しながら言葉を添えることで、
子どもは「分かってもらえた」という安心感を得やすくなります。

4. Step2:理由を一緒に整理するための質問

共感のあとに大切なのは、「なぜそう思うのか」を対話を通して整理していくことです。
詰問にならないよう、ゆっくり、開かれた質問を心がけます。

4-1. 話を引き出すオープンクエスチョン

  • 「辞めたいって思うようになったのは、いつ頃から?」
  • 「そう思うようになったきっかけみたいな出来事はある?」
  • 「サッカーをしているとき、どんな気持ちになることが多い?」
  • 「サッカーのどの部分が一番つらい?練習?試合?人間関係?」

4-2. ポジティブな側面も一緒に確認する

辞める・続けるを考える前に、
「サッカーの中でまだ好きな部分」「やりがいを感じる瞬間」がないかも確認します。

  • 「サッカーをやっていて『よかったな』と思うことって、何かある?」
  • 「今でも少しは楽しいと感じる瞬間はある?」
  • 「サッカーを始めた頃は、どんなところが好きだった?」

これによって、
「全部が嫌になった」のか、
「一部がしんどくて全体が嫌に感じているだけなのか」が見えてきます。

5. Step3:一時的な疲れか、環境の問題かを見極める

感情と理由を整理したうえで、何が本質的な問題なのかを一緒に考えていきます。

5-1. 一時的な疲れ・スランプの可能性

少し休んだり、目標や関わり方を変えることで解消されるケースもあります。

  • 「最近、学校や他の習い事も忙しくて、単純に疲れているだけかもしれない」
  • 「試合でミスが続いて、自信をなくしている時期かもしれない」

その場合は、次のような提案も選択肢になります。

  • 「まずは1か月だけ、試合の出場を減らしてもらう・休ませてもらう」
  • 「目標を『うまくやる』から『1つチャレンジする』に変えてみる」
  • 「家ではサッカーの話をあまりしない期間をつくる」

5-2. 環境が合っていない可能性

コーチの指導スタイルやチームの雰囲気、人間関係が合わない場合、
「辞めるかどうか」だけでなく、「環境を変える」という選択肢もあります。

  • 「チームを変える(カテゴリーやクラブを変える)」
  • 「しばらくは友だちとの遊びサッカーだけにする」
  • 「ポジションや役割を変えてもらえないか相談してみる」

重要なのは、子どもの心身の安全と健康が守られているかです。
強いストレスやいじめ、過度な叱責がある場合は、
無理に続けさせるよりも、環境を変えることを優先すべきです。

6. Step4:最終的な選択は「一緒に決めた」と感じさせる

辞めるにしても、続けるにしても、
子どもが「親に決められた」ではなく、
「自分も一緒に考えて決めた」と感じられることが大切です。

6-1. 決め方のプロセスを見える化する

紙やノートに、「続ける場合」と「辞める場合」のメリット・デメリットを書き出すのも有効です。

  • 「続けたら、どんないいことがありそう?」
  • 「続けたら、どんな大変なことがありそう?」
  • 「辞めたら、どんな気持ちになりそう?」
  • 「辞めたら、後で後悔しそうなことはある?」

こうした対話を通じて決めることで、
どちらを選んだとしても、子どもは納得感を持ちやすくなります。

6-2. 決断後にかけたい一言

決めたあとに、保護者からどんなメッセージを伝えるかも大事です。

  • 「たくさん考えて決めたんだね。その気持ちを尊重するよ」
  • 「サッカーを続けても、辞めても、あなたのことを応援していることは変わらないよ」
  • 「今回の経験は、きっとこれからの選択にも活きてくると思う」

7. 保護者自身の気持ちへのケアも忘れない

子どもが「辞めたい」と言ったとき、実は保護者も心の中で
「せっかくここまで頑張ってきたのに…」
「自分のサポートの仕方が悪かったのでは…」
と揺れています。

その気持ち自体は自然なものです。
ただ、その感情を子どもにストレートにぶつけすぎないことが大切です。

例えば、次のような考え方が助けになります。

  • 「サッカーはあくまで人生の一部。子ども自身の人生はこれから長く続く」
  • 「続けることだけが正解ではなく、『やめる』『変える』という選択にも意味がある」
  • 「一番大切なのは、サッカーを通じて育った心の力や経験を、次にどうつなげるか」

8. まとめ:辞めたいと言ったときこそ、信頼を深めるチャンス

子どもが「サッカー辞めたい」と口にした瞬間は、
保護者にとっても試されているように感じる場面かもしれません。

しかし、そのときこそ、次の3つを意識することが大切です。

  • すぐに否定せず、まずは感情を受け止める
  • 理由を一緒に整理し、「一時的な疲れ」か「環境の問題」かを見極める
  • 最終的な選択を「一緒に決めた」と感じられる対話のプロセスを大切にする

サッカーを続けるにしても、辞めるにしても、
共感と対話を土台にした関わりは、
子どもの「自分で考えて選択する力」と「親への信頼」を育てていきます。
それこそが、サッカーを通じて得られる大切な財産の一つと言えるでしょう。

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