アドバンテージとファウルの違い — JFA/IFAB 競技規則の要点
「反則が起きたときに笛を吹くのか、続行させるのか」を整理し、現場で迷わない判断基準と再開・懲戒の扱いをまとめる。
1. 用語の定義
- ファウル（反則）：競技者の違反によりプレーを中断して処罰し、所定の方法（DFK/IFK/PK等）で再開するもの。
- アドバンテージ：反則が起きた瞬間に、攻撃側に明確な利益が見込める場合、笛を吹かず続行させる主審の裁量（数秒内に利益が消えれば元の反則へ遡及）。
2. 判断の起点と時間軸
- 起点は反則が発生した瞬間。
- 主審は約2～3秒で状況を評価：利益が続けばアドバンテージ継続、消えれば反則に戻す。
- 安全性（負傷・乱闘の恐れ）が最優先。危険が高い場合は即時中断。
3. アドバンテージ適用の基準
- 攻撃の利益：数的優位、広いスペース、明確な決定機、確実なボール保持。
- 安全：無謀・過度の力・乱暴の疑いが低いこと（高ければ中断）。
- 試合管理：報復や混乱の恐れが低いこと。
4. 再開方法・懲戒の違い（早見表）
| 項目 | ファウル（中断） | アドバンテージ（続行） |
|---|---|---|
| 主審の合図 | 笛で中断 | 腕を前方へ伸ばし「プレーオン」 |
| 再開方法 | DFK/IFK/PK等、反則の種類に従う | 続行。必要なら数秒内に元の反則地点へ遡及し再開 |
| 懲戒（カード） | 中断時に提示可 | 原則、次の停止時に提示（選手特定を保持） |
| SPA（有望な攻撃の阻止） | 中断→FK＋警告が基本 | 得点/明確な利益が出たら多くは警告不要（別理由あれば警告） |
| DOGSO（明白な得点機会阻止） | 通常退場（PK場面のボールプレー意図で軽減規定あり） | そのまま得点成立→多くは警告へ軽減 |
| 危険・暴力（SFP/VC） | 即時中断＋退場が原則 | 原則適用不可（安全最優先）。極めて特別な場合のみ続行→次の停止で退場 |
5. 代表的なケーススタディ
- 中盤で小さなホールディング後も前方に数的優位：アドバンテージ適用→攻撃継続。利益消失ならFKに戻す。
- PA手前でファウル直後に決定的な抜け出し：アドバンテージ→決定機維持。未成立なら遡及してDFK/PK。
- 無謀～過度の力のタックル：安全最優先で中断。懲戒（黄/赤）を即時処理。
- DOGSOの戦術的ファウル：続行して得点成立→退場から警告へ軽減。未得点→退場＋相応の再開。
6. 実務フロー（主審の頭の中）
- 反則認知：種類・場所・影響を即時把握。
- 利益評価（2～3秒）：スペース/数的/決定機/保持の質。
- 安全評価：SFP/VC/負傷の有無。危険なら即中断。
- 決定：続行（プレーオン）or 遡及（FK/PK）。
- 懲戒処理：次の停止で確実に提示・記録（SPA/DOGSO/無謀等）。
7. チーム側のコーチング要点
- 続行文化：接触直後にプレーを止めず、前向きの一歩と即時サポートを徹底。
- セカンド回収：アドバンテージ下ではこぼれ球の回収配置が決定機を左右。
- 感情管理：報復は利益を失わせる最大要因。抗議より継続を優先。