鬼ごっこなどの遊びで身体を温めるウォーミングアップ
1. 遊びを使ったウォーミングアップの目的
試合やトレーニングの前に、鬼ごっこなどの「遊び」を使ったウォーミングアップを行うことで、次のような効果が期待できます。
- 体温と心拍数を上げる:全身を動かすことで血流が良くなり、筋肉や関節が動きやすくなる。
- ケガの予防:筋肉が温まることで肉離れや捻挫などのリスクを減らす。
- 反応スピード・瞬発力の準備:追いかける・逃げる動きが多く、方向転換やダッシュの準備になる。
- コミュニケーションの活性化:仲間と声を出し合うことで、チームの雰囲気が明るくなり集中力も高まる。
単に「走るだけのアップ」ではなく、ゲーム性のある遊びを取り入れることで、集中力や楽しさも同時に引き出すことができます。
2. 代表的なウォーミングアップ用の遊び
ここでは、サッカーの前に行いやすい代表的な遊びを紹介します。人数やスペースに応じて組み合わせて使ってください。
2-1. 基本の鬼ごっこ
目的:全身運動で体温を上げる/ダッシュ・ストップ・方向転換の準備。
やり方:
- コーンなどで長方形のエリア(例:20m × 20m)を作る。
- 「鬼」を1〜2人決め、それ以外は逃げる役にする。
- 鬼はエリアの中で逃げる選手を追いかけ、タッチしたら役割交代、またはゼッケンなどで鬼を増やしていく。
- 30〜60秒を1セットとして、間に休憩をはさみながら2〜4セット行う。
ポイント:
- 最初のセットは強度を低めにし、徐々にスピードを上げていく。
- 急な減速時は膝を曲げて重心を低くし、滑らないようにする。
- 鬼役・逃げる役をローテーションして、全員がバランスよく走れるようにする。
注意点:接触が増えすぎないようにエリアを広めに取り、転倒や衝突が起きないよう選手同士の距離感を意識させる。
2-2. ライン鬼ごっこ
目的:方向転換の質を高める/俊敏性とフットワークの準備。
やり方:
- グラウンドのライン(タッチライン・ゴールライン・センターライン)やコーンで作ったラインの上だけを走るルールにする。
- 鬼は1〜2人。全員がラインの上を走り、ラインから外れずに逃げる。
- 鬼にタッチされたら鬼と交代、または一定時間鬼役を続けてもらう。
- 1セット30〜45秒、2〜3セットを目安に行う。
ポイント:
- 細かいステップで向きを変えることを意識させる。
- 顔はできるだけ上げて、周りの選手の動きを見るように声かけをする。
注意点:ライン上にボールやコーンが散らばっていないかを確認し、転倒の原因になるものを取り除いてから始める。
2-3. 色鬼(カラーマーカー鬼ごっこ)
目的:瞬時の判断力・リアクションスピードの向上。
やり方:
- エリア内に赤・青・黄など、色の違うマーカーやビブスを数カ所に置く。
- 鬼を1〜2人決め、それ以外はエリア内を自由に動き回る。
- コーチが「赤!」「青!」など色をコールしたら、全員その色のマーカーにタッチしに行く。
- マーカーに向かう途中で鬼にタッチされたらアウト、もしくは鬼に交代。
- 色のコール間隔は5〜10秒おき、1セット30〜60秒を2〜3セット行う。
ポイント:
- 最初は歩き~軽いジョグ、慣れてきたらダッシュを増やす。
- コーチはコールするタイミングや色をランダムにして、予測しづらくする。
注意点:マーカーの数が少なすぎると衝突が増えるため、人数に合わせて十分な数を用意する。
2-4. ボール鬼ごっこ
目的:ボールに慣れながら身体を温める/ドリブルの準備。
やり方:
- 選手全員にボールを1個ずつ持たせ、エリア内を自由にドリブルさせる。
- 鬼を1〜2人決め、鬼もボールをドリブルしながら追いかける。
- 鬼は、相手のボールを軽くタッチする、またはボールを奪えたら成功とする。
- タッチされた選手はその場で5回足踏みしてから再スタート、など簡単なペナルティを決めておく。
- 1セット30〜45秒を2〜3セット行う。
ポイント:
- 顔を上げて周りを見ながらドリブルすることを意識させる。
- 利き足だけでなく、両足を使ってボールをコントロールする。
注意点:強く蹴りすぎて他の選手に当てないように、「優しくコントロールする」ことを事前に共有する。
3. 種目別まとめ(目的・強度の目安)
| 種目 | 主な目的 | 人数・時間の目安 | 強度・ポイント |
|---|---|---|---|
| 基本の鬼ごっこ | 全身を使って体温と心拍数を上げる | 8〜20人/30〜60秒×2〜4セット | 最初は軽め→後半でダッシュを増やす |
| ライン鬼ごっこ | 俊敏性・方向転換の準備 | 8〜16人/30〜45秒×2〜3セット | 細かいステップと姿勢の低さを意識 |
| 色鬼(カラーマーカー) | 判断スピード・リアクションの向上 | 8〜20人/30〜60秒×2〜3セット | コールをランダムにして反応を引き出す |
| ボール鬼ごっこ | ボールタッチと視野の確保 | 8〜18人/30〜45秒×2〜3セット | 顔を上げてドリブル/強く蹴りすぎない |
4. 全体を通しての注意点
- 強度のコントロール:最初から全力で走らせず、徐々にスピードと切り返しの回数を増やしていく。
- 時間の管理:遊びに夢中になるとオーバーワークになりやすいので、1種目あたり5〜8分程度を目安にする。
- 安全面のチェック:地面の状態(ぬかるみ・石・穴)や周囲の障害物を事前に確認し、転倒・衝突を防ぐ。
- 水分補給:暑い時期は短いインターバルでもこまめに水分補給の時間を入れる。
- 次のメニューへのつなぎ:遊びの動きから、そのままラダーやステップワーク、ボールを使ったパス練習などにスムーズに移行できるように構成する。
鬼ごっこなどの遊びを上手に取り入れることで、選手の身体だけでなく、心も試合モードに切り替えることができます。チームの年齢やレベルに合わせてルールを調整し、楽しく効果的なウォーミングアップを作っていきましょう。