「前はできたのに」が子どもに与えるプレッシャーと、サッカー現場での適切な声かけ例

投稿日:2025年12月12日  カテゴリー:子供のモチベーションを下げる親が言ってはいけない言葉

「前はできたのに」が子どもに与えるプレッシャーと、サッカー現場での適切な声かけ例

サッカーの指導現場や親子の会話で、つい口にしてしまいがちな言葉のひとつが「前はできたのに」です。一見すると「本来の力を出してほしい」という期待から出てくる言葉ですが、受け取る子どもにとっては強いプレッシャーや自己否定感につながることがあります。

1. 「前はできたのに」が子どもに与える3つの心理的プレッシャー

① 今の自分を否定されている感覚

「前はできたのに」は、裏を返せば「今の自分はできていない」「前より悪くなっている」と受け取られやすい言葉です。子どもは

  • 「今の自分はダメなんだ」
  • 「成長するどころか、後退しているのかもしれない」

と感じ、現在の自分の状態そのものを否定された気持ちになりやすくなります。これが積み重なると、自信の低下や自己肯定感の低下につながります。

② 失敗を恐れてプレーが縮こまる

「前はできたのに」と言われた子どもは、次のような不安を抱きやすくなります。

  • 「また失敗したら、また言われるかもしれない」
  • 「チャレンジしてミスするくらいなら、安全なプレーを選ぼう」

その結果、チャレンジを避ける・無難なプレーを選ぶ・ボールをもらいたがらなくなるといった行動につながり、プレーの質や伸びしろを自分で制限してしまうことがあります。

③ 過去の自分との比較による「自己否定のループ」

サッカーは、成長期の体の変化やポジション変更、チーム戦術の変化など、様々な要因でプレーが揺れ動くスポーツです。それにもかかわらず、「前は○○できた」「昔はもっと点を取れていた」と言われ続けると、子どもは

  • 「あの頃の自分が一番良くて、今の自分は劣っている」
  • 「がんばっているのに認められていない」

と感じやすくなり、過去の自分との比較で今の自分を責める癖がついてしまう危険があります。

2. サッカー現場で起こりがちな具体的なシチュエーション

試合でミスした場面

例:決定機でシュートを外した後に、

  • 「前はああいうの決めてたのに」
  • 「この前はちゃんとクリアできてたじゃん」

と言われると、子どもは「大事な場面で信用を失った」と感じ、次のチャンスで思い切ってシュートを打てなくなることがあります。

成長期やコンディションの変化

身長が伸びて重心やバランスが変わる時期、疲労が溜まっている時期、新しいポジションに挑戦している時期などは、一時的にパフォーマンスが落ちることも珍しくありません。そのような時に「前はもっと走れてたのに」と言われると、

  • 「がんばっていないと思われている」
  • 「努力を分かってもらえていない」

と受け取り、理解されていない孤立感を感じることもあります。

ポジション変更・戦術変更のタイミング

サイドバックからセンターバック、トップ下からボランチなど、役割が変われば求められるプレーも変わります。それにもかかわらず、

  • 「前のポジションではもっと活躍できてたのに」

と言われると、「新しい役割でのチャレンジ」よりも「過去の自分の方が良かった」というメッセージとして響いてしまいます。

3. 「前はできたのに」を言い換える3つの視点

指導者や保護者が意識したいのは、「過去との比較」ではなく、

  • ① 今の状況の理解(コンディション・成長・役割の変化)
  • ② プロセスへの注目(取り組み方・チャレンジ・修正)
  • ③ 次の一歩の明確化(何を意識すれば良くなるか)

という3つの視点です。この3つを押さえて声をかけることで、子どもは「責められている」ではなく「支えられている」「一緒に成長している」と感じやすくなります。

4. NGワードとおすすめの声かけ例(サッカー場面別)

場面 NGワード(避けたい声かけ) おすすめの声かけ例 ポイント
決定機でシュートミス 「前はああいうの決めてたのに」 「思い切ってシュート打てたのは良かったよ。次はどこを狙えそうだった?」 結果ではなくチャレンジと振り返りに焦点を当てる。
守備で対応が遅れた場面 「前は1対1で負けてなかったのに」 「相手の最初の一歩が速かったね。次はどのタイミングで距離を詰めてみる?」 負けた事実ではなく、「どう修正するか」に意識を向けさせる。
走る量が減ったように見える 「前はもっと走れてたのに、さぼってる?」 「今日は少し重そうに見えたけど、体の調子はどう? 無理してたら教えてね。」 さぼりと決めつけず、コンディションに寄り添う姿勢を示す。
新しいポジションでうまくいかない 「前のポジションの方が活躍できてたのに」 「新しいポジションは覚えることが多いよね。でも、○○のパスの出し方はこのポジションでも生かせそうだよ。」 過去の長所を認めつつ、新しい役割とのつながりを示す。
一時的にプレーの質が落ちたように見える 「前みたいにやってよ」「なんで前の方が良かったの?」 「最近、プレーが変わってきたけど、自分ではどう感じてる? 一緒に整理してみようか。」 評価を押しつけるのではなく、本人の感覚を言語化させるきっかけを作る。

5. 子どもの自己肯定感を守りながら成長を促すためのポイント

① 「過去との比較」ではなく「今日のベスト」に注目する

「前はできたのに」ではなく、

  • 「今日の中で良かったプレーはどこだった?」
  • 「今日の自分のプレーを10点満点でつけるとしたら何点? なぜその点数?」

のように、その日の取り組みに目を向ける習慣を作ることで、子どもは自分で自分の成長を評価する力を養っていきます。

② できていない点より「できている点」をまず言語化する

改善点を伝える前に、

  • 「今日は守備への戻りが早かったね」
  • 「味方が困っているときにサポートに行けていたよ」

と、すでにできていることを具体的に伝えることで、「自分には良いところもある」という感覚を持たせたうえで次のステップに進ませることができます。

③ 「一緒に考えるスタンス」を大切にする

指導者や保護者が「評価する人」だけになると、子どもは評価される側に固定されてしまいます。「前はできたのに」はその典型です。代わりに、

  • 「さっきの場面、一緒に振り返ってみようか」
  • 「次はどうしてみたい? 考えていることを聞かせて」

といった声かけを通じて、子ども自身が答えを見つけていくプロセスをサポートすることが、長期的な成長につながります。

6. まとめ:「前はできたのに」を封印して、未来志向の言葉へ

「前はできたのに」という言葉は、指導者や保護者の「もっと良くなってほしい」という思いから出てきます。しかし、その意図とは裏腹に、子どもにとっては今の自分を否定されたように感じる危険性が高い言葉です。

だからこそ、過去との比較ではなく、

  • 「今日、どこが良かったか」
  • 「次にどうつなげるか」
  • 「一緒に成長していく感覚」

に焦点を当てた声かけに変えていくことが重要です。

サッカーは、うまくいく時期もあれば、停滞する時期もある長い旅です。その旅路で子どもの自己肯定感を守りながら、チャレンジする心を育てていくためにも、「前はできたのに」という言葉を手放し、未来志向の言葉かけを意識していきましょう。

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