子どもを他人と比べる言葉がモチベーションを下げる理由と、成長を認める声かけへの切り替え方
サッカーの指導現場や家庭で、つい口をついて出てしまう言葉の一つが「◯◯くんはもうできているのに」「あの子はもっと頑張っているよ」といった、他人との比較です。良かれと思って「刺激になるように」「もっとやる気を出してほしい」と使ってしまいがちですが、実はこれが子どものモチベーションを大きく下げてしまうことがあります。
1. 他人との比較が子どもの心に与える3つの悪影響
① 自分の価値を「他人基準」でしか感じられなくなる
「◯◯くんはレギュラーなのに」「△△ちゃんはもっと走っている」といった言葉は、子どもに「自分の価値は、あの子と比べてどうかで決まる」というメッセージとして届きます。その結果、
- 「あの子より劣っている自分は価値がない」
- 「上には上がいるから、どれだけやっても満足してもらえない」
と感じやすくなり、自己肯定感の低下や「どうせ自分はダメだ」という諦めにつながっていきます。
② 努力よりも「結果」と「他人の評価」ばかりを気にするようになる
他人との比較が続くと、子どもは次第に
- 「うまくやること」よりも「怒られないこと」
- 「自分の成長」よりも「他人より上に見られること」
を優先するようになります。すると、
- ミスを恐れてチャレンジしない
- 難しいプレーを避けて無難なプレーだけを選ぶ
- 一度の失敗で「もういいや」と投げ出してしまう
といった行動が増え、本来伸ばしたいチャレンジ精神や学ぶ姿勢が弱くなってしまう危険があります。
③ チームメイトを「仲間」ではなく「ライバル」「敵」と感じてしまう
サッカーはチームスポーツであり、本来は仲間同士で支え合い、高め合うことが大切です。しかし「◯◯くんみたいにやりなさい」「△△ちゃんを見習いなさい」と比較され続けると、子どもにとってその相手は、
- 「自分の評価を下げる存在」
- 「親やコーチに褒められるライバル」
に変わってしまいます。すると、
- チームメイトの成功を素直に喜べなくなる
- 協力するよりも、自分だけよく見せようとする
といった状況が生まれ、チームワークや人間関係の質を下げてしまうことにもつながります。
2. サッカー現場でよくある「比較の言葉」
実際によく聞かれる比較の言葉の例を挙げてみます。
- 「同い年の◯◯はもうシュート決めてるよ」
- 「あの子はもっと真剣に練習してるよ」
- 「あのチームの子たちみたいに走れないの?」
- 「レギュラーの子たちはもっと意識が高いよ」
これらの言葉は、「あなたの今の努力は足りない」「あの子の方が優れている」というメッセージとして届きます。結果的に、「どうせ自分なんて」「何をしても追いつけない」と感じさせ、やる気を削いでしまいます。
3. 比較をやめて「子ども自身の成長」に光を当てる視点
大切なのは、「他人との比較」から「過去の自分との比較」へと視点を切り替えることです。具体的には、
- 「前よりどう変わったか」
- 「どんな努力を積み重ねているか」
- 「どんな部分が伸びてきているか」
に注目して声をかけていくことが重要です。
4. NGワードと成長を認める声かけの言い換え例
| 場面 | NGワード(他人との比較) | おすすめの言い換え例 | ポイント |
|---|---|---|---|
| シュート力に差があると感じたとき | 「◯◯くんはもっと強いシュート打てるのに」 | 「前よりボールの勢いが出てきたね。この調子でフォームを安定させていこう。」 | 他人ではなく「前の自分」との比較に切り替える。 |
| 運動量に差があると感じたとき | 「あの子は最後まで走っているのに、なんで走れないの?」 | 「今日は後半もよく戻れていたね。あと一歩動けるように、体力トレーニングも一緒に考えようか。」 | 責めるのではなく、「できた部分」と「次の一歩」をセットで伝える。 |
| レギュラー・控えの差が気になるとき | 「レギュラーの子たちくらい頑張らないと無理だよ」 | 「最近、守備のポジショニングが良くなってきたね。その積み重ねがチャンスにつながるから、今やっていることを続けていこう。」 | 他人の基準ではなく、「成長している具体的なポイント」を言語化する。 |
| テクニックの差が気になるとき | 「△△ちゃんみたいにもっとドリブルで抜けるようになりなさい」 | 「ボールの触り方が柔らかくなってきたね。次は1対1で仕掛ける回数を少し増やしてみようか。」 | 「見習え」ではなく、「今できていること+具体的なチャレンジ目標」を示す。 |
| 試合に出られず落ち込んでいるとき | 「あの子は試合に出てるのに、なんであなたは出られないの?」 | 「悔しい気持ちは大事だね。その気持ちがあるからこそ、練習での一つ一つが意味を持つよ。今の努力は必ず次につながるから、一緒に続けていこう。」 | 誰かとの比較ではなく、「気持ち」「努力」「未来」の3つを認める。 |
5. 子ども自身の成長を認める声かけのポイント
① 具体的な行動・変化を言葉にして伝える
「頑張ってるね」だけではなく、
- 「最近、自分からボールを受けに行く回数が増えてきたね」
- 「前はすぐあきらめていた場面で、今日は最後まで追いかけていたよ」
のように、具体的な行動や変化を指摘することで、子どもは「自分の成長に気づいてもらえている」と感じやすくなります。
② 結果より「プロセス」を評価する
ゴールや勝利だけでなく、
- チャレンジした回数
- あきらめずに戻り続けた姿勢
- ミスの後に切り替えた速さ
といったプロセスに目を向けて声をかけることで、子どもは「やるべきこと」を理解しやすくなり、自分の努力に意味を感じられるようになります。
③ 子ども自身に「自分の成長」を振り返らせる質問をする
一方的な評価だけでなく、
- 「前と比べて、自分のどこが変わってきたと思う?」
- 「今日のプレーで、一番よかったと思うところはどこ?」
- 「次の試合までに、どこを少し良くしたい?」
といった質問を投げかけることで、子ども自身が自分の成長を自覚し、次の目標を自分で設定する力を育てることができます。
6. まとめ:比べる相手を「他人」から「昨日の自分」へ
子どもを他人と比べる言葉は、一瞬の刺激にはなっても、長期的なモチベーションや自己肯定感を削ってしまうリスクが高い言葉です。サッカーは長い時間をかけて成長していくスポーツだからこそ、
- 「誰かと比べてどうか」ではなく
- 「昨日の自分と比べて、どこが一歩前に進んだか」
という視点を大切にしたいところです。
そのためにも、他人との比較でプレッシャーをかけるのではなく、子ども自身の変化・努力・チャレンジに光を当てる声かけへと切り替えていきましょう。それが、サッカーを長く楽しみながら成長していくための、最も大きな土台になります。