「そんなこともわからないの?」が子どもの自信と学習意欲を奪う理由と、やる気を引き出す言葉の例
サッカーの指導現場や家庭で、つい感情的になったときに出てしまいがちな言葉が「そんなこともわからないの?」という否定的なフレーズです。一見すると「前にも教えたのに」「基本的なことだから理解してほしい」という思いから出てくる言葉ですが、子どもの心には強い否定として突き刺さり、自信や学習意欲を大きく奪ってしまいます。
1. 「そんなこともわからないの?」が子どもの心に与える3つのダメージ
① 「自分はダメだ」というレッテルを自分に貼ってしまう
「そんなこともわからないの?」という言葉には、
- 「これくらいできて当然なのに、できていない」
- 「理解できないお前がおかしい」
というニュアンスが含まれています。これを何度も聞かされると、子どもは
- 「自分は頭が悪いのかもしれない」
- 「サッカーのセンスがないんだ」
と感じ、自分自身に「できない人間」というラベルを貼ってしまいます。一度この自己イメージが出来上がると、「どうせ自分には無理だ」という考えが癖になり、チャレンジする前から諦めるようになります。
② 質問すること・わからないと言うことを怖がるようになる
本来、上達に必要なのは「わからないことを素直に聞けること」です。しかし、「そんなこともわからないの?」と言われた経験がある子どもは、
- 「質問したらまたバカにされるかもしれない」
- 「わからないって言ったら怒られるかもしれない」
と感じ、わからないことを隠すようになります。その結果、
- 戦術の意図が理解できないまま何となくプレーする
- ポジショニングの意味がわからず、指示待ちになる
といった状態になり、上達のスピードが大きく落ちてしまいます。
③ 失敗や誤解を「学びのきっかけ」として活かせなくなる
「そんなこともわからないの?」という言葉は、失敗や誤解を
- 「ダメな証拠」
- 「怒られる原因」
として扱ってしまいます。本来であれば、ミスや理解不足は
- 「何がわかっていないのかが見えるチャンス」
- 「成長につながるヒント」
のはずですが、その前に感情的な否定の言葉が来てしまうと、子どもは「次はミスをしないこと」ばかりに意識が向き、
- チャレンジを避ける
- 安全なプレーだけを選ぶ
ようになってしまいます。
2. サッカー現場でよくある「そんなこともわからないの?」シーン
具体的に、どのような場面でこの言葉が出てしまうのかを見てみましょう。
- ポジショニングがずれているときに
「そんなこともわからないの? そこじゃないって何回言った?」 - マークの受け渡しがうまくいかなかったときに
「そんなこともわからないで試合出てるの?」 - ビルドアップの形を理解していないときに
「この前も説明したよね? そんなこともわからないの?」
指導者や保護者としては「大事なポイントだから理解してほしい」という思いがあるかもしれませんが、子ども側には
- 「何度も言われたのにできない自分はダメだ」
- 「考えるより先に怒られる」
という感覚だけが残り、プレーの内容ではなく、自分自身への否定として記憶されてしまいます。
3. 否定的な言葉を「やる気を引き出す言葉」に変える視点
重要なのは、「できていない事実」を責めるのではなく、
- どこでつまずいているのか
- 何が理解できていないのか
- どう説明すれば伝わるのか
という原因とプロセスに目を向けることです。そのうえで、
- 「一緒に整理しよう」
- 「ここまで理解できているから、あと一歩だね」
というスタンスで関わることで、子どもは「責められている」のではなく「サポートされている」と感じ、学びに向かう力を取り戻していきます。
4. NGワードと、やる気を引き出す言い換え例
| 場面 | NGワード(避けたい言葉) | おすすめの言い換え例 | ポイント |
|---|---|---|---|
| ポジショニングがずれているとき | 「そんなこともわからないの?」 | 「今の場面、どこに立つイメージだった? 一緒に確認してみよう。」 | 問いかけで考えさせた上で、正しい位置を共有する。 |
| マークの受け渡しがうまくいかなかったとき | 「何回言ったらわかるの?」 | 「今のは誰を見ていて、どこで迷った? そこを整理できればもっと良くなるよ。」 | 「できていない」ではなく、「どこで迷ったか」を一緒に探す。 |
| 戦術の意図が理解できていないとき | 「この程度もわからないでどうするの?」 | 「この形のどこが一番わかりにくい? そこをもう一回説明するね。」 | 理解度の差は自然なものと捉え、説明を調整する姿勢を見せる。 |
| 基本的な約束事を忘れているとき | 「前にも教えたよね? なんで覚えてないの?」 | 「この約束事、大事だからもう一度整理しよう。覚えやすい言葉にしてみようか。」 | 責めるのではなく、「覚えやすい形に工夫する」方向に意識を向ける。 |
| 何度も同じミスを繰り返すとき | 「また同じミス? ほんとにわかってるの?」 | 「同じ場面でつまずいているね。動画や図を使って一緒にイメージを作ろうか。」 | ミスの繰り返しを「理解スタイルの問題」と捉え、教え方を変える。 |
5. 子どものやる気を引き出すための声かけのポイント
① 「できていない部分」だけでなく「すでにできている部分」もセットで伝える
否定的な言葉は、できていない一点だけを切り取って責める形になりがちです。代わりに、
- 「さっきのプレー、ボールを失った後にすぐ戻っていたのはすごく良かった。」
- 「あとはポジションの取り方をもう少し整理できたら、もっと楽に守れるよ。」
のように、良い点+改善点をセットで伝えることで、「自分にはできている部分もある」「だからこそ、次の一歩に進める」と感じやすくなります。
② 「わからない」と言える環境をつくる
子どもが安心して成長するためには、
- 「わからないと言っても否定されない」
- 「質問してもいい雰囲気がある」
ことが不可欠です。例えば、
- 「わからないところがあったら、いつでも聞いていいからね。」
- 「わからないって言えるのは大事な力だよ。」
といった言葉を日常的にかけておくことで、子どもは安心して質問できる土台を持つことができます。
③ 「一緒に考える」というスタンスを示す
上から評価する立場ではなく、
- 「一緒に整理しよう」
- 「一緒に答えを見つけていこう」
という姿勢を見せることで、子どもは「自分はダメだから教えられている」ではなく、「成長するためにサポートされている」と感じます。これが、やる気と安心感を同時に育てる関わり方です。
6. まとめ:「そんなこともわからないの?」を手放し、成長を支える言葉へ
「そんなこともわからないの?」という言葉は、指導者や保護者が焦りやもどかしさを感じたときに出やすいフレーズです。しかし、その一言は、
- 子どもの自信を奪い
- 質問する意欲をそぎ
- 失敗やミスから学ぶチャンスを潰してしまう
危険な言葉でもあります。
だからこそ、
- どこでつまずいているのかを一緒に確認する
- わからないことを言葉にする力を認める
- すでにできている部分にも光を当てる
といった関わり方に切り替えていくことが重要です。
サッカーは、理解と経験の積み重ねで上達していくスポーツです。「そんなこともわからないの?」という否定ではなく、「一緒に理解していこう」「ここまでできているから大丈夫」という支えになる言葉で、子どもの成長を後押ししていきましょう。