「やる気あるの?」が子どもに与える影響と、やる気を育てる声かけのコツ
1. 「やる気あるの?」と聞かれたとき、子どもはどう受け取るか
大人が「やる気あるの?」と口にするとき、多くの場合は「もっとできる力があるのに、もったいない」という気持ちから出ています。
しかし、子ども側から見ると、この言葉は次のように受け取られやすい表現です。
- 「今の自分はダメだ」と評価・否定されているように感じる。
- やる気そのものではなく、「人としての価値」を疑われていると感じる。
- 本当は頑張っているのに、それを見てもらえていないと感じる。
その結果、 自己肯定感の低下、反発心、やる気のフタが閉じる といった状態につながりやすくなります。
2. なぜ「やる気あるの?」がやる気を下げてしまうのか
| ポイント | 子どもの心の中で起きていること |
|---|---|
| 評価・ジャッジとして聞こえる | 「できていない自分を責められている」と感じ、自分を守るために言い訳や反抗が出やすくなる。 |
| 具体的な行動が見えない | 「何をどう変えればいいのか」が分からず、ただ責められた印象だけが残る。 |
| 気持ちを理解されていない感覚 | プレッシャーや不安、分からなさなど本当の理由が伝わらず、「どうせ分かってもらえない」と心を閉ざしやすくなる。 |
| やる気=性格の問題にされる | 「自分はやる気のない人間なんだ」と思い込み、チャレンジする意欲そのものが落ちていく。 |
3. やる気を育む声かけの基本方針
やる気を引き出すためには、次の3つのポイントを意識した声かけが有効です。
- ① 気持ちの理解から入る:いきなり評価するのではなく、「今どう感じているか」を受け止める。
- ② 行動レベルで具体的に伝える:「やる気」ではなく、「次に何をどうするか」に焦点を当てる。
- ③ 成長のプロセスを認める:結果だけでなく、「取り組み」「変化」「工夫」を見つけて言葉にする。
4. 「やる気あるの?」を言いかえた方がいい場面
例えば、サッカーの練習や試合でプレーが消極的に見えるとき、テスト勉強に身が入っていないときなど、
つい「やる気あるの?」と言いたくなる場面があります。
そのときこそ、「何が原因で動けていないのか?」に目を向けていくことが大切です。
- 疲労や体調不良で、そもそも体が動かない。
- 何をしたらいいか分からず、迷っている。
- 失敗が怖くて、リスクをとれない状態になっている。
- チームメイトや友達との関係で悩み、気持ちが前に向かない。
こうした背景を知らないまま「やる気あるの?」とぶつけると、本人の苦しさを上塗りしてしまうことがあります。
5. やる気を育む具体的な声かけ例
以下は、「やる気あるの?」と責めるのではなく、やる気を引き出す方向に変えた具体例です。
| よくあるNGに近い声かけ | やる気を育てる声かけ例 | 意図・ポイント |
|---|---|---|
| 「やる気あるの?」 | 「今、どんな気持ちでプレーしている?」 「今日は何が一番うまくいっていないと感じる?」 |
評価の前に、まず本人の気持ちや現状認識を引き出す。 |
| 「もっと本気でやりなさい」 | 「次の5分だけ、ここだけは全力でやってみようか。」 | 「本気」を抽象的に言うのではなく、時間や場面を区切って具体化する。 |
| 「何度言わせるの?」 | 「さっき話した中で、一番意識したいポイントはどれだと思う?」 | 繰り返し叱るより、本人にキーワードを要約させて定着を促す。 |
| 「そんな態度じゃ試合に出られないぞ」 | 「試合で自分がどうなっていたら一番うれしい? そのために今日できることは何だろう。」 | 脅しではなく、「なりたい姿」から逆算して行動を考えさせる。 |
| 「ちゃんとやれ!」 | 「今のプレーで、良かったところを1つと、次に変えたいところを1つ教えて。」 | 自己評価を言葉にさせることで、主体性と修正力を育てる。 |
| (無言で不機嫌な表情) | 「顔がしんどそうに見えるけど、体?気持ち?どっちがきつい?」 | 表情から状態を推測し、問いかけでサインを受け取る姿勢を示す。 |
6. 声かけの前に、まず見てあげたいポイント
- 結果ではなく、「練習への参加」「チャレンジの回数」「あきらめず続けた時間」など、プロセスに目を向ける。
- うまくいかなかった場面だけでなく、少しでも良くなった部分を言葉にして伝える。
- 「失敗しても大丈夫」という安全基地になる態度を、大人側が先に見せる。
- 叱る前に、「今日はどうしたいと思ってここに来た?」と本人の目的を確認する。
7. 子どものやる気を支えるために、大人ができること
やる気は、「叱られて生まれる」ものではなく、
理解され、認められ、小さな成功体験を重ねることで育つもの
です。
そのために、大人側が意識したいポイントは次の通りです。
- 感情的になったときこそ、一呼吸おいてから話す。
- 「ラベル貼り(やる気ない・根性がない等)」ではなく、「行動(今日は声が少なかったね等)」に焦点を当てる。
- できていない点を伝える前に、「まず一つ良かったところ」を必ず伝える。
- 子どもが自分で目標を言葉にし、それに向けた行動を決めるサポート役に回る。
「やる気あるの?」という一言を、
「何に困っている?」「一緒にどうしようか?」という対話に変えていくことで、
子どもの内側から湧いてくるやる気と主体性を、長い目で育てていくことができます。