サッカーで起こりやすい鼻骨骨折:発生場面・応急対応・プレー継続判断とフェイスマスク運用ガイド

投稿日:2025年12月26日  カテゴリー:サッカー選手に発生しやすい障害・外傷

サッカーで起こりやすい鼻骨骨折:発生場面・応急対応・プレー継続判断とフェイスマスク運用ガイド

鼻骨骨折はサッカーの外傷の中でも頻度が高く、特に接触プレーや空中戦で発生しやすい代表的な顔面外傷です。 出血や腫れが目立つ一方で、外見上の変形が軽度でも骨折しているケースがあり、逆に出血が少なくても重症(鼻中隔血腫など)を伴うことがあります。 本記事では、発生しやすい場面、試合中の応急対応、プレー継続の判断基準、フェイスマスク(保護マスク)の使用と安全配慮を、現場運用に落とし込める形で整理します。

1. 鼻骨骨折が発生しやすい場面(サッカーの典型パターン)

鼻骨は突出しているため、外力が直接加わりやすく、特に「視野外からの接触」「空中での相対速度」が大きい局面で受傷リスクが上がります。

場面 具体例 発生しやすい要因
空中戦(競り合い) CK/ロングボールのヘディングで相手の頭・肘・肩が鼻に当たる ジャンプ中で回避が難しく、衝突エネルギーが大きい
ゴール前の混戦 こぼれ球に身体が寄り、顔面が接触(頭・肩・腕) 密集で視野が狭く、予測外の接触が起こる
プレッシング/寄せ 相手が身体を入れた瞬間に顔面へ接触 距離が近く、急停止・方向転換で接触が起こる
スライディングや転倒 転倒時に地面や相手の膝・肩に顔面を打つ 手が出せず顔から入る、または二次接触が起きる
ボール直撃 近距離シュートやクリアが鼻に当たる 反応時間が短く、防御姿勢が間に合わない

2. 試合中の応急対応(現場での手順)

現場では「出血コントロール」「呼吸の確保」「重症サインの除外」「鼻中隔血腫の疑い」を優先します。 見た目の変形だけで判断せず、症状と危険サインをセットで確認してください。

2-1. まず行うこと(初期対応)

  1. プレーを止めて安全確保(再接触を避け、座位で落ち着かせる)
  2. 鼻を強く触らない(整復を試みない。押し戻しはしない)
  3. 鼻出血の対応:前かがみ(血液を飲み込まない)+鼻翼をやさしく圧迫
  4. 冷却:鼻周囲を冷やす(皮膚保護をして間欠的に)
  5. 呼吸確認:鼻閉が強い場合は口呼吸を促す
  6. 視覚・意識の確認:脳震盪や眼窩周囲外傷の併発を想定する

2-2. 鼻出血(鼻血)の止血のコツ

  • 姿勢:前かがみ(上を向かない)
  • 圧迫:鼻の骨ではなく、鼻翼(小鼻の柔らかい部分)を一定時間圧迫
  • 口に血が回る場合は吐き出す(飲み込むと吐き気の原因)
  • 止血が難しい場合は無理に続行判断をしない

2-3. 直ちに医療機関へ(緊急性が高いサイン)

以下がある場合は、鼻骨骨折に加えて他部位の重症外傷が疑われるため、救急受診または早急な医療評価が必要です。

危険サイン 考えられる問題 対応
止血できない大量出血、繰り返す出血 血管損傷、凝固異常、重度損傷 早急に受診(状況により救急)
意識がぼんやり、頭痛、吐き気、記憶障害 脳震盪の併発 同日復帰させず医療評価
視力低下、複視、眼球痛、眼の動きの異常 眼窩骨折など 速やかに受診
透明な液体が鼻から出る(鼻汁様) 重篤な頭蓋底損傷の可能性 緊急受診
鼻の中が片側または両側で強く膨らみ、強い鼻閉 鼻中隔血腫(見逃し注意) 早急に受診(放置リスクが高い)

3. プレー継続の可否(現場判断の実務)

鼻骨骨折が疑われる場合、原則としてその場で「骨折の有無」を確定することは難しいため、 「続行しても安全か」「判断力が落ちていないか」「呼吸と視野が保てるか」を軸に判断します。 競技現場では“続行させない”判断が安全側です。

3-1. 継続を避けるべき条件(少なくとも当日は中止が妥当)

  • 出血が止まらない、または再出血を繰り返す
  • 鼻閉が強く呼吸が苦しい(口呼吸でも辛い)
  • 顔面の痛みが強く、集中・判断が落ちている
  • めまい、吐き気、頭痛、ぼんやりなど脳震盪疑いがある
  • 視覚異常(複視、視力低下、目の痛み)がある
  • 明らかな変形、急速な腫脹、広範な皮下出血がある
  • 鼻中隔血腫が疑われる(鼻の中の膨らみ、強い鼻閉、圧痛)

3-2. 例外的に「一時的に戻れる」可能性があるケース(ただし慎重に)

出血が完全に止まり、意識・神経症状がなく、呼吸や視野が保て、痛みが軽度でプレーへの影響が小さい場合に限り、 トレーナー/コーチの監視下で限定的に戻る判断が検討されることはあります。 ただし、顔面への再接触で悪化しやすいため、実務上は交代・受診につなぐ方が安全です。

4. 受診・検査の目安(いつ、どこへ)

鼻骨骨折は画像検査で評価されることがありますが、現場ではまず医療機関で「変形の程度」「呼吸の通り」「鼻中隔血腫の有無」を評価することが重要です。 特に外傷後の腫れが強いと外観評価が難しくなるため、受診タイミングとフォローがポイントになります。

状況 推奨 目的
赤旗所見がある 当日すぐ受診(救急含む) 重症合併症の除外
出血は止まったが、痛み・腫れ・変形が強い 早めに受診 骨折の程度、治療方針(固定/整復等)の検討
症状が軽いが骨折が疑わしい 数日以内に受診 腫れが落ち着いた段階での形態評価
鼻中隔血腫が疑われる できるだけ早急に受診 放置リスクが高い(機能・形態の問題につながる可能性)

5. フェイスマスク(保護マスク)の使用:適応と運用

鼻骨骨折後や骨折疑いで競技復帰を早める場合、フェイスマスク(保護マスク)を用いることがあります。 目的は「再接触時の外力を分散し、鼻への直接衝撃を軽減する」ことです。 ただし、マスクは万能ではなく、競技規則・安全性・フィット感の管理が必須です。

5-1. マスク運用のメリット・注意点

観点 メリット 注意点(リスク)
保護性能 直接衝撃の軽減、心理的不安の低下 完全に防げない。強い衝撃では悪化し得る
視野・呼吸 適切な形状なら視野を保てる 視野狭窄、曇り、呼吸のしづらさが出ることがある
接触安全 柔らかいパッド併用で安全性が上がる 硬い縁・突起は相手に危険。規則上NGになる場合がある
フィット 固定が安定するとプレーに集中しやすい ずれ・圧迫痛・皮膚トラブル(擦れ)に注意

5-2. マスク選定と装着の実務ポイント

  • 縁が丸く、相手に危険が少ない設計(鋭いエッジ、突起がない)
  • 固定が安定(走ってもずれない。ジャンプでも動かない)
  • 視野確保(左右・下方視野が極端に狭くならない)
  • 皮膚保護(接触部にパッド、摩擦部の対策)
  • 練習で慣らす(試合当日に初装着は避ける。距離感・ヘディング姿勢が変わる)
  • 審判・大会規定の確認(用具規定に抵触しない形状・材質)

6. 安全配慮:復帰判断と練習内容の調整

鼻骨骨折(疑い含む)後は、再接触で痛み・変形・出血が再燃しやすく、特に空中戦・競り合いが多い局面はリスクが高いです。 復帰を急ぐ場合でも、段階的に「接触リスク」を上げていく運用が現実的です。

フェーズ 推奨内容 避けたい内容
直後(当日〜) 安静、止血・冷却、医療評価 練習・試合の継続、ヘディング、対人
復帰初期 非接触の技術練習(ボールタッチ中心) 空中戦、競り合い、密集局面の反復
復帰中期 強度を上げた非接触+限定接触(状況管理下) 無制限の対人、セットプレーの混戦
復帰後期 マスク運用+通常練習(監視下) 痛み・出血が残る状態でのフルコンタクト

7. 現場での「伝達テンプレ」(指導者→保護者)

現場での情報共有が曖昧だと、帰宅後の観察が不十分になりやすいです。最低限、以下を明確に伝えると運用が安定します。

  • 受傷時刻・受傷状況(空中戦で頭部接触、など)
  • 出血の有無、止血までの時間、腫れや変形の有無
  • めまい・吐き気・頭痛・ぼんやり等の脳震盪症状の有無
  • 受診推奨の理由(赤旗所見、鼻中隔血腫疑い、など)
  • 当日の運動中止、再出血や症状悪化時の受診目安

8. まとめ(実務の要点)

  1. 鼻骨骨折は空中戦・混戦・視野外接触で起きやすい
  2. 現場は止血・冷却・呼吸確保、そして重症サインの除外が最優先
  3. 鼻中隔血腫の疑い(鼻内の膨らみ・強い鼻閉)は見逃さず早期受診
  4. プレー継続は安全側で判断し、出血/呼吸/神経症状/視覚を基準に中止判断
  5. フェイスマスクは有効だが万能ではないため、規則確認・フィット・相手の安全配慮と、接触リスクを段階化した復帰運用が重要

顔面外傷は「軽傷に見えても現場での見逃し」が起こりやすい領域です。 チーム内で応急対応と復帰判断の基準を共有しておくことで、選手の安全と長期的な競技継続を守れます。

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