2018年ロシアW杯 日本代表 戦術分析レポート|西野朗の柔軟なシステム運用とベルギー戦「2点差逆転」の構造

投稿日:2026年1月6日  カテゴリー:チーム分析

2018年ロシアW杯 日本代表 戦術分析レポート|西野朗の柔軟なシステム運用とベルギー戦「2点差逆転」の構造

2018年ロシアW杯の日本代表は、大会直前に就任した西野朗監督の下、短期間で戦術と布陣を再構築し、グループHを勝点4(1勝1分1敗)で2位突破、決勝トーナメント進出を達成しました。 本稿では、西野ジャパンの戦術アプローチ(複数フォーメーションの運用)、グループステージ3試合の戦術的評価、主要選手の役割整理、 そしてベルギー戦で露呈した「成長」と「限界」を、戦術・配置・ゲームマネジメントの観点から整理します。

1. 西野朗監督の戦術アプローチとフォーメーション変遷

西野監督の特徴は、短期決戦における「固定化よりも最適化」を優先し、状況に応じてシステムや配置を柔軟に使い分けた点にあります。 就任後のテストでは3-4-2-1、4-2-3-1など複数の形を試し、最終的には4-2-3-1をベースにしつつ、守備局面のブロック形や前線の当て方を可変させる運用へと寄せていきました。 「いつでも立ち戻れる基盤」としての4-2-3-1を保持しながら、4-4-2や3バック系のオプションを用意し、バックアップも含めた総力戦の設計を行った点が、ロシアW杯の日本の戦術的骨格です。

観点 狙い(西野ジャパン) メリット リスク
システム運用 4-2-3-1を基盤に、3バック/4-4-2も選択肢として保持 相手の特徴に合わせて最適化しやすい 組み合わせが変わるほど成熟度が落ちやすい
選手起用 主力固定に寄り過ぎず、総入れ替えも含め選択肢を最大化 大会を通じたコンディション管理・カード管理に対応 序列変動で連係が不安定化する可能性
守備ブロック 4-2-3-1のままでも守備時に4-4-2化するなど可変 相手ビルドアップへの当て方を調整できる 可変のズレが生じると、中央や背後を使われる

2. グループステージ総括:柔軟性が光った戦いと、層・安定感の課題

グループHの日本は、初戦で数的優位を活かして勝利を獲得し、セネガル戦ではビハインドからの修正力を示し、ポーランド戦ではターンオーバーと割り切った判断で突破を確定させました。 一方で、守備のミス起点の失点、ターンオーバー時の成熟度低下、そして終盤のゲーム運びを巡る評価など、課題も同時に可視化されました。

2-1. 第1戦 vs コロンビア:幸運を得点と勝点に変換した4-2-3-1

日本は4-2-3-1でスタート。開始直後の相手退場により数的優位を得て、主導権を取りやすい状況になりました。 香川真司がPKで先制し、同点とされた後もセットプレーから大迫勇也が勝ち越しゴール。 数的優位の中でも中盤の構成(ボランチ2枚+トップ下)を活かし、保持と前進の安定感を確保して勝点3を獲得しました。 ただし失点がセットプレー起点であった点は、リード後の集中と守備の整理という論点を残しています。

2-2. 第2戦 vs セネガル:2度追いつく修正力と、失点の構造

この試合も基本は4-2-3-1。立ち上がりのミスから失点する苦しい展開でしたが、乾貴士のミドルで同点。 さらに再度リードを許すも、本田圭佑の投入が奏功し、混戦から再び同点に持ち込みました。 追いつくための再設計(交代・配置の微調整)が機能した一方、2失点とも「ミス」や「マークのズレ」から生じており、守備の安定感は最後まで課題として残りました。

2-3. 第3戦 vs ポーランド:ターンオーバーと4-4-2、そして“割り切り”

西野監督は大幅なターンオーバーを敢行し、システムも4-4-2へ変更。 しかしトップ下を置かない布陣の影響もあり中央の起点が作れず、攻撃は停滞。セットプレーから失点し0-1で敗れました。 終盤は他会場の結果を踏まえ、無理に同点を狙わずボール保持でリスクを避ける判断を選択。 内容面の批判は生んだものの、トーナメント進出という目的に資する現実的な選択でもあり、短期決戦特有の「最適解」を優先した局面でした。

試合 結果 採用システム(主) 戦術的評価 露呈した課題
コロンビア戦 2-1 勝利 4-2-3-1 数的優位を保持と前進の安定に変換し勝点3 セットプレー失点、リード時の管理
セネガル戦 2-2 引き分け 4-2-3-1 交代策で流れを変え、ビハインドから2度追いつく ミス起点の失点、マークの整理不足
ポーランド戦 0-1 敗戦 4-4-2 ターンオーバー+割り切りで突破確定を優先 成熟度低下、中央の起点不足、攻撃の停滞

3. 注目選手とチーム構成:役割の明確化が生んだ推進力

ロシアW杯の日本は、個の能力だけでなく、役割の割り当てが比較的明確でした。 前線の起点(大迫)、トップ下のテンポ(香川)、左サイドの創造性(乾+長友)、中盤の配給と切り替え(柴崎)、右の上下動とタスク遂行(原口)など、 「どこで優位を作るか」が見えやすい構造を持ちました。

選手 主な役割 機能したポイント 戦術的な意味
香川真司 トップ下のテンポ形成・フィニッシュ関与 初戦でPK獲得~先制、攻撃のタクト 4-2-3-1の中央に「前進の基準点」を作る
大迫勇也 1トップの起点(収める/つなぐ/競る) コロンビア戦で決勝点、前線の安定 保持局面の出口を確保し、二列目の押し上げを可能に
乾貴士 左サイドの創造性(運ぶ/カットイン/シュート) セネガル戦の同点弾、ベルギー戦でも得点 左で局面を変え、停滞を打開する“個の突破口”
長友佑都 左SBの推進力とデュエル 乾との連係、縦の厚み 左サイドで数的優位やスペース創出を誘発
柴崎岳 中盤の配給・スイッチ役 縦パス、展開力、攻守の接続 保持を“前進”へ変換する中枢として機能
原口元気 右サイドのタスク遂行(守備・上下動・飛び出し) ベルギー戦で先制点、攻守の貢献 可変システムでも崩れにくい“実働”のピース
吉田麻也 最終ライン統率・対人/空中戦 対強豪でも粘り強く対応 保持型の背後リスクを受け止める最後の砦
本田圭佑 ゲームチェンジャー(途中投入で局面を動かす) セネガル戦で同点弾 短期決戦で“結果を出す交代”を成立させる要素

4. 決勝トーナメント1回戦 vs ベルギー:2点リードから逆転負けに見る成長と限界

ベルギー戦は、日本の戦術的成熟と、世界トップレベルの「修正力」「個の厚み」「終盤のゲーム強度」を同時に映し出した試合でした。 日本は4-2-3-1をベースとしつつ、守備局面で4-4-2のブロックを形成するなど、相手の3バックに対する当て方を調整し、前進を外に追いやる対応で一定時間主導権を確保。 後半に原口・乾の得点で2-0とリードを奪い、「勝ち筋」に入ったかに見えました。

しかしベルギーは高さと推進力を持つ交代カードを切り、空中戦と圧力で試合の局面を強制的に書き換えます。 日本は2失点で同点に追いつかれ、最終盤は自陣で耐える時間が増加。 そして終盤、攻撃のコーナーキックから一転してカウンターを受け、ラストプレーで決勝点を奪われました。 2点差を追いつかれ、最後に刺されるまでの流れは、「押し込まれた局面での耐久性」「空中戦への構造的弱さ」「リード時のゲームコントロール」という論点を凝縮しています。

局面 日本が機能した要素(成長) 日本が崩れた要素(限界) 戦術的示唆
守備ブロック 相手3バックに対し当て方を調整し、前進を限定 押し込まれた後の“高さ”とセカンド回収で劣勢 可変ブロックに加え、終盤の耐久設計が必要
得点局面 カウンターの質と判断で2得点 リード後に試合を落ち着かせる局面管理が難化 2点リード後の「保持の目的」が変わる(時間/位置/リスク)
交代への対応 試合前半~中盤は規律で対応 相手の高さ投入で、空中戦と圧力に適応が遅れる 相手の“武器変更”に対する対抗カードが必要
ラストプレー ベスト8に届くところまで試合を作った 攻撃CKからのカウンターで致命傷(リスク管理) 終盤のセットプレーは「攻め方」より「失点しない設計」が重要

5. 総括:西野ジャパンの戦術的成果と、次の課題

2018年ロシアW杯の日本代表は、短期間で戦術的オプションを整備し、グループ突破を現実的に達成しました。 コロンビア戦での勝点3獲得、セネガル戦での修正力、ポーランド戦での突破優先判断など、短期決戦の意思決定も含めて「勝ち上がる設計」を示した点は大きな成果です。

一方で、ターンオーバー時の成熟度低下、ミス起点の失点、空中戦と終盤の耐久性、リード時のゲームコントロール、そしてセットプレーからのリスク管理は、 ベスト8を狙うフェーズで避けて通れない課題として残りました。 ロシアW杯は、日本が強豪相手にあと一歩まで迫った大会であると同時に、その“一歩”の正体(高さ・圧力・終盤の意思決定)を明確にした大会でもありました。

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