日本代表カタールW杯2022 攻守分析レポート|森保ジャパンの5-4-1ブロックと逆転勝利の設計、クロアチア戦PK敗退の論点

投稿日:2026年1月6日  カテゴリー:チーム分析

日本代表カタールW杯2022 攻守分析レポート|森保ジャパンの5-4-1ブロックと逆転勝利の設計、クロアチア戦PK敗退の論点

2022年カタールワールドカップの日本代表は、グループリーグでドイツ代表・スペイン代表に逆転勝利し、決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表にPK戦の末敗退(1-1、PK 1-3)という結果を残しました。 本稿では、森保一監督の戦術設計(フォーメーション運用とプレス設計)、守備組織とトランジション、ハーフタイム修正を含む采配、主要選手の機能、 そしてクロアチア戦で露呈した課題を、攻守の構造から整理します。

1. 戦術・フォーメーションの基本方針(カタールW杯仕様へのチューニング)

森保ジャパンは大会前から4-4-2を基盤に、ミドルプレスとショートカウンターを軸とする設計を積み上げてきました。 ただし本大会では格上相手の比重が大きく、守備の優先順位を引き上げ、低めの5-4-1ブロック(実質的には5バック+2ラインの圧縮)を採用する時間が増加。 「裏へのロングボール抑制」「中央レーンの閉鎖」「外へ誘導してから奪う」「奪った瞬間に縦へ速く」という、コンパクトなカウンター構造に寄せました。

また、相手や連戦状況に応じて4-2-3-1、3-4-2-1(実質3-4-3)へ可変させ、守備ブロックの形、前線の当て方、攻撃時の幅取りを都度調整。 “固定化”よりも“試合ごとの最適化”を優先したことが、カタールW杯における森保ジャパンの戦術的特徴です。

要素 基本設計 狙い 副作用(リスク)
守備ブロック 5-4-1(低め)+局面で4-4-2(ミドル)へ 中央封鎖と裏ケア、外誘導からの奪取 押し込まれ続けるとラインコントロールが難化
プレス 我慢の低ブロック→狙いの時間帯で前から強度を上げる 短時間のハイプレスで“奪いどころ”を作る 強度の波が大きいと相手にリズムを作られる
攻撃 カウンター主体(縦の速さと背後) 奪った瞬間の縦進入で決定機を作る 保持局面の再現性(崩し)を作りづらい
システム可変 4-2-3-1 / 3-4-2-1(実質3-4-3)を併用 相手の配置・特徴に合わせた最適化 連係の基準点が揺れると配置の曖昧さが出る

2. ドイツ戦:3-4-2-1(実質3-4-3)への移行と、後半の“質的変化”

ドイツ戦(2-1逆転勝利)は、守備の構造で耐え、交代と可変で攻撃の質を上げ、短い時間帯で勝負を決めた試合です。 立ち上がりは守備的に構え、相手に保持させつつスペース管理を優先。後半開始に複数枚の交代を行い、3バック+ウイングバックを基盤にした 3-4-3の色を濃くし、前線の圧力と背後の脅威を増幅させました。

重要なのは「守備の我慢」から「攻撃の迫力」へ、試合のモードをはっきり切り替えた点です。 交代で生じた走力・突破力・縦へのスピードが、ドイツの最終ライン背後とサイドの戻りを同時に揺さぶり、逆転の足場となりました。

局面 日本の狙い キーとなった変化 成果
前半 守備優先でスペースを消し、カウンターの芽を残す 低め~ミドルのブロックで耐える 大崩れせず後半勝負へ
後半 前線の圧力と背後の脅威を強化 交代を起点に3-4-3色を強め、縦へ速く 短時間で2得点し逆転

3. スペイン戦:低ブロックの耐久と、後半10分の“奪い方”の再設計

スペイン戦も序盤は5-4-1に近い低いブロックで耐える設計でしたが、早い時間帯にラインが下がり過ぎたことで外側に優位を作られ失点。 ただし前半を0-1で粘り、ハーフタイムの交代で攻撃の推進力を注入し、後半は一定時間帯から前線プレスのスイッチを入れる修正を行いました。

ここでのポイントは、単に前に出るのではなく「奪った瞬間に縦へ刺す」ショートカウンターの再現性を高めたことです。 スペインの一瞬の緩みを突き、同点→逆転へ持ち込んだプロセスは、森保ジャパンの“狙いの時間帯”運用が最も成功した例と言えます。

フェーズ 守備の形 起きた問題 / 修正点 結果
前半 5-4-1(低め) ラインが下がり過ぎ、外で前進を許して失点 0-1で耐えて後半へ
後半 低ブロック+時間帯で前線プレス強化 交代で推進力を注入、奪い方を前向きに変更 短い決定的時間帯で逆転

4. 守備ブロックとトランジション:機能した点と、クロアチア戦で出た綻び

大会を通じ、日本の守備はゾーンをベースに、ミドル(4-4-2)と低ブロック(5-4-1)を行き来する設計でした。 我慢する時間帯で致命傷を避け、奪ってから一気に縦へ出るトランジションは、スペイン戦を象徴に高い効果を発揮しました。

一方で、クロアチア戦ではゾーン守備における「斜め後方のカバー(ディアゴナーレ)」や、縦パスに対する受け渡しに不安が出た時間帯がありました。 個々がアプローチで解決しようとする局面が増えるほど、背後の補完が遅れ、相手に“次のパス”を通される形が目立つ。 ただし、遠藤航のリカバリーや奪取は守備の生命線となり、危機の芽を複数回摘んだ点は明確なプラスです。

項目 良かった点 課題 改善の方向性(戦術論点)
ミドル~低ブロック 中央を閉じ、外誘導→奪取の形が成立 押し込まれ続けるとライン管理が難化 「下げる」だけでなく「上げ直す」合図と基準点が必要
トランジション 奪って縦へ速い攻撃が刺さる(ショートカウンター) 保持局面での崩しの再現性が不足しがち カウンター以外の“保持の型”をもう一段追加
ゾーンの受け渡し 局面では高強度のアプローチができる 斜め後方のカバー不足、縦パスへの連鎖が遅れる 守備の優先順位(人よりスペース)を再徹底

5. 森保監督の采配:ハーフタイム修正と“勝負カード”の運用

森保監督の采配で際立ったのは、交代を「疲労の入れ替え」ではなく「試合のモードチェンジ」に使った点です。 ドイツ戦の複数枚交代からの可変、スペイン戦の後半プレスへの切り替えは、狙いが明確で、実際に得点へ直結しました。 またターンオーバーを前提に大会を設計し、相手と連戦状況を見ながら“走力と推進力”を後半に残す運用は、短期決戦の合理性があります。

一方で、システム変更が多いほど、一貫性(基準点)が揺れやすいのも事実です。 交代で前へ出る強度を上げるなら、同時に「前へ出た後のリスク管理」までセットで整備する必要があり、 決勝トーナメントでは“勝ち切る”ための細部(2点目、セットプレー、PK)に課題が残りました。

6. クロアチア戦:勝ち切れなかった理由(2点目・セットプレー・PK)

ラウンド16のクロアチア戦は、120分で勝負を決め切れず、PK戦で敗れた試合です。 90分を1-1で終え、延長でもスコアは動かず、PK戦は相手GKのセーブもあり1-3で敗退。 「同点に追いつかれた後に勝ち越せなかったこと」「勝負どころで決め切る精度」「PKという一発勝負への備え」が、主要論点となります。

論点 試合で起きたこと 戦術的含意 次に必要な改善
2点目の重要性 先制/同点後に勝ち越せず、決着がPKへ 守備設計だけでは勝ち切れない 保持局面の崩し、押し込んだ時の再現性を強化
セットプレー対応 クロス1本・流れの中の対応で失点 一瞬のズレが致命傷になる局面 マークの原則とセカンド回収の徹底
PK戦 複数人が失敗し敗退 技術・心理・順番設計まで含めた準備が必要 “練習量”だけでなく、想定とルーティンを設計

7. 選手個別評価(機能した強みと、勝負所の課題)

堂安律:ゴールで試合の流れを変える“アクセント”

堂安は途中投入から強度を上げ、得点という形で試合のモメンタムを動かしました。 前線からのプレス、セカンド回収への寄与も含め、攻守の切り替え局面で価値が高い選手でした。

三笘薫:突破で局面を壊すが、最後の一撃は課題として残る

三笘は投入後にサイドの1対1で明確な優位を作り、攻撃の突破口となりました。 一方で、決勝トーナメントでは決定機の一撃、そしてPKという局面で結果を出し切れず、勝負を決める精度が課題として残りました。

田中碧:運動量と前進に寄与する一方、配置の曖昧さが出る局面も

田中は中盤での献身性と前進の推進力を提供しました。 ただしシステム可変が多い試合では、アンカー周辺が空く局面や配置の基準点が揺れる場面があり、ビルドアップ時の整理は改善余地が残ります。

冨安健洋:最終ラインの安定感と対人強度

冨安は複数ポジションに適応しつつ、対人・空中戦・ポジショニングで安定感を提供しました。 守備の軸として、格上相手の時間帯に耐えるうえで重要なピースとなりました。

吉田麻也:統率と経験値、そしてセットプレー局面の重み

キャプテンとして最終ラインを統率し、経験値でチームを支えました。 一方で、ノックアウトラウンドではセットプレーやクロス対応といった“一瞬の局面”が勝敗を決めるため、 守備の原則整理とチーム全体での再現性が、次のフェーズの課題として残りました。

選手 主な価値 機能したポイント 課題(次の伸びしろ)
堂安律 得点と強度で流れを変える 途中投入で前進とシュートの選択肢を増やす 保持局面での継続的な再現性
三笘薫 突破で局面を破壊 サイドの1対1から決定機を作る 最後の一撃(決定力/PK含む)
田中碧 運動量と前進 中盤の走力で攻守をつなぐ 可変時の配置整理(アンカー周辺の管理)
冨安健洋 守備の安定と適応力 対人・空中戦・ポジショニングで耐久性を上げる 保持局面での押し上げとビルドアップの最適化
吉田麻也 統率と経験値 最終ラインのマネジメント セットプレー/クロス対応のチーム設計をより精密に

8. 総括:勝てる設計は示したが、“勝ち切る精度”が次のテーマ

カタールW杯の日本代表は、格上相手に守備の構造とトランジションで勝点を奪い切り、ドイツ・スペインに逆転勝利というインパクトを残しました。 低ブロックと時間帯プレスの使い分け、交代を起点にした試合のモードチェンジは、短期決戦で有効な“勝てる設計”として成立していました。

ただし、決勝トーナメントで必要となるのは「勝てる」だけでなく「勝ち切る」精度です。 2点目を奪う攻撃の再現性、セットプレーの一瞬を落とさない守備の原則、PKを含む勝負所の準備――この3点が、次のフェーズでの最重要テーマとなります。 カタールで示した“世界と戦える構造”を土台に、最後の一段を積み上げられるか。そこに日本代表のベスト8、さらにその先の現実味が宿ります。

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