スペイン・スーペルコパ2026決勝 戦術分析レポート|バルセロナ 3-2 レアル・マドリード(エル・クラシコ)
試合概要と展開
2026年1月12日にサウジアラビア・ジッダで開催されたスペイン・スーペルコパ決勝、バルセロナ対レアル・マドリードの「エル・クラシコ」は、 両者の意地と戦術が激突した壮絶な一戦となりました。結果はバルセロナが3-2で勝利し、2年連続でスーペルコパを制覇。 前半はバルサがボール支配で主導権を握りつつ、終了間際に双方が立て続けにゴールを奪い合う乱打戦に。 後半は一時レアルが反撃して試合の流れを変えかけましたが、バルサが再びリードを奪い、そのまま逃げ切りました。 戦術的にはフォーメーションの工夫や試合中のシステム変更、そしてポジショナルプレーとトランジション(攻守の切り替え)の応酬が見どころでした。
試合データ(主要情報)
| 大会 | スペイン・スーペルコパ 2026(決勝) |
|---|---|
| 開催日 | 2026年1月12日 |
| 開催地 | サウジアラビア・ジッダ |
| 会場 | キング・アブドゥッラー・スポーツ・シティ |
| 対戦 | バルセロナ vs レアル・マドリード |
| スコア | バルセロナ 3-2 レアル・マドリード |
スターティングフォーメーションと両監督の狙い
バルセロナ:4-3-3(監督:ハンス・フリック)
バルセロナはお馴染みの4-3-3システムを採用。GKには若手のジョアン・ガルシア(背番号13)を起用し、 最終ラインは左SBバルデ、右SBクンデ、CBにエリック・ガルシアと18歳の新星パウ・クバルシという布陣。 中盤はアンカー(底)のフレンキー・デ・ヨングがゲームメイクを担い、インテリオール(インサイドハーフ)にペドリとフェルミン・ロペスを配置。 前線は右ウィングにヤマル、左ウィングにラフィーニャ、最前線にロベルト・レヴァンドフスキという構成です。 狙いは「ポジショナルプレー」をベースに高いボール支配率と前線からのハイプレスで主導権を握ることでした。
レアル・マドリード:4-4-2(監督:シャビ・アロンソ)
レアルは柔軟な4-4-2で臨み、相手に合わせた“オーダーメイド”の布陣を敷きました。 守備時には5バック気味の4-4-2にも見える独特の形で、バルサの強みを消す狙いが見られました。 本職ボランチのチュアメニをCBに下げ、若手のラウル・アセンシオを右SBに起用。右SHにはバルベルデを置き、 バルサ左サイド(ラフィーニャ&バルデ)の縦関係に対抗。中盤中央ではマンマーク気味の対応が徹底され、 ペドリにはベリンガム、フェルミンにはカマヴィンガが張り付き、アンカーのデ・ヨングには前線のゴンサロ・ガルシアが落ちてケアする形を取りました。 前線はヴィニシウス・ジュニオールと、20歳の若手FWゴンサロ・ガルシアの2トップ(エムバペは膝の違和感でベンチスタート)。 中盤の潰し合いとロングカウンター勝負に持ち込み、バルサのポゼッションとハイラインへ対抗する意図が明確でした。
バルセロナのビルドアップとレアルの守備ブロック
試合序盤、バルセロナは高いボール支配率でゲームをコントロール。デ・ヨングを起点に後方から細かく繋ぎつつ、 ペドリが中盤で攻撃の糸口を探し、ヤマルとラフィーニャが幅を取ってレアル守備陣を広げます。 レアルは自陣にミドル~ローブロック(中~低い守備ブロック)を構築し、 マンマーク戦術で局所的に数的同数を作りながらバルサの攻撃を受け止めました。 とくにバルサ左サイドに対してはアセンシオ&バルベルデで挟み撃ちする形がハマり、序盤はバルサも思うように崩せません。
しかしバルサは、ポジションの入れ替えや個人技で守備網を揺さぶり始めます。 ビルドアップ時には本来後方に残るエリック・ガルシアが意識的にボールを持って中盤まで運ぶ場面が見られ、 レアルの前線から中盤への守備連動にほころびが生じます。 ペドリとフェルミンがマークを外すために入れ替わり、ヤマルがドリブルで1人剥がすことで中盤のズレを作り、 徐々にレアルの守備ブロックを分断していきました。
一方、バルサのハイプレスはレアルのビルドアップを封じにかかり、GKクルトワからのパスコースを塞いでロングキックを蹴らせる形に誘導。 前半36分の先制点は、この強度の高いプレッシングとトランジションから生まれました。 中盤でフェルミンがボール奪取に絡み、素早い攻撃転換からラフィーニャが左足でシュート(クロス気味)を放ち、ゴール右隅に突き刺します。 ポゼッションだけでなく、失った直後のカウンタープレスから即座に攻撃へ移ることで、レアルの守備網を破った象徴的シーンでした。
レアルのカウンター戦術とバルサのトランジション対応
レアルの攻撃はロングカウンターにフォーカス。自陣で奪うと中盤を省略し、ヴィニシウスやゴンサロを走らせます。 とくに狙いは、ヴィニシウス対パウ・クバルシの1対1局面。バルサがハイラインを敷くほど背後スペースが広がり、 レアルはそこをロングボールで突くことで、バルサのプレスの足を止める場面も作りました。
バルサの守備→攻撃のトランジションは総じて速く、レアルに速攻の形を連発させたわけではありません。 ただし一度プレスを剥がされると背後に広大なスペースが生まれるのも事実で、 45+2分のヴィニシウスの同点ゴールがまさにそれでした。 ヴィニシウスが左サイドで加速し、複数の対応を剥がして右足の低いシュートをゴール右隅へ流し込み、 何もない状況から個の力で守備網を破壊してみせました。
前半終盤:5分間で3ゴールの乱打戦
前半終盤はジェットコースターのような展開となります。45+4分、バルサは失点直後のキックオフから落ち着きを取り戻し、 ラフィーニャ→ペドリと素早く縦に繋いでレヴァンドフスキへスルーパスを通します。 レヴァンドフスキは飛び出したGKクルトワの頭上を冷静なループシュートで沈め、2-1と勝ち越し。
しかし45+6分、レアルは右CKから同点に追いつきます。ロドリゴのクロスにディーン・ハウセンが高い打点で合わせ、 ゴールライン上でラフィーニャがブロックするもクリアしきれず、跳ね返りをゴンサロ・ガルシアが押し込みました。 わずか5分で3ゴールが生まれ、前半は2-2で折り返しました。
後半:レアルの反撃とバルサの再修正
後半立ち上がりはレアルがギアを上げ、前線からのプレスを強化。バルサ陣内でプレーする時間を増やし、複数の決定機を創出しました。 とくにヴィニシウスのミドルや、ロドリゴの至近距離の決定機など、勝ち越しに迫る場面が続きますが、 バルサGKジョアン・ガルシアが連続セーブで凌ぎ、チームを救いました。
その後、レアルのプレスが落ち着くとバルサがボールを握り直し、フリック監督は65分前後に2枚替えで攻撃のテコ入れを実施。 フェルミンとレヴァンドフスキに代えてダニ・オルモとフェラン・トーレスを投入し、中盤の創造性と前線の走力を補強します。 レアルもアルダ・ギュレル投入などで対応し、終盤戦へ向かいました。
決勝点:ラフィーニャの“スリップショット”と運の介在
73分、試合を決定付ける瞬間が訪れます。右サイドからの攻め込みの流れで、ラフィーニャがエリア手前で左足シュートを選択。 踏み込みで芝に足を取られバランスを崩しながら放ったシュートは、レアルDFアセンシオの脚に当たってコースが変化し、 ループ気味にゴールへ吸い込まれました。クルトワも逆を突かれ、バルサが3-2と勝ち越します。
失点直前にレアルはエムバペ投入を準備していましたが、失点後に76分から投入。 終盤は総力戦で同点を狙うも、膝の状態が万全ではなく、決定的な脅威とはなりきれませんでした。
終盤の攻防と勝敗を分けたポイント
ロスタイムにはドラマが待っていました。90+1分、バルサはヤマルのボールロストからカウンターを受け、 デ・ヨングがエムバペを止める決死のタックルでレッドカード(退場)。 バルサは即座にアラウホ投入で5-3-1の超守備的布陣に切り替え、残り時間を凌ぐ構えを取ります。
レアルは数的優位で猛攻。90+4分の混戦からのシュート、90+6分の右CK(GKクルトワも上がる総攻撃)など、 最後の最後までゴールへ迫りましたが、ここでもGKジョアン・ガルシアが神懸かった反応で防ぎ切り、バルサが勝利を掴みました。
戦術的トピック整理(要点)
| 局面 | バルセロナの狙い | レアルの狙い |
|---|---|---|
| ビルドアップ | デ・ヨング起点の保持、ウイングで幅、ポジション入替でズレを作る | ミドル~ローブロック+局所マンマークで同数化し崩れを防ぐ |
| 守備(バルサ) | 前線からハイプレス→カウンタープレスで即時奪回 | 縦に速い展開でハイライン背後を突く(ヴィニシウスの個) |
| トランジション | 失った直後の囲い込みでカウンター遮断 | 奪った瞬間に前線へ供給しロングカウンターで完結 |
| 後半の流れ | 一時押し込まれるがGKと集中で耐え、交代で再構築 | 前線プレス強化で主導権奪取を狙うが決定機を決め切れず |
| 終盤 | 退場後は5-3-1で守り切る | パワープレイも含めて総攻撃、最後はGKに阻まれる |
注目選手のパフォーマンス
ラフィーニャ(バルセロナ)
文句なしのプレイヤー・オブ・ザ・マッチ。36分の先制点、73分の決勝点(コース変化を含む)で2得点。 攻撃で常にゴールへ向かう姿勢を示し、守備でもゴールライン上のブロックなどハードワークを怠りませんでした。
ヤマル(バルセロナ)
大一番でも物怖じしないプレーを披露。中盤に降りて数的優位を作り、ドリブルで局面打開も見せました。 一方で終盤のボールロストがデ・ヨング退場につながるなど、成長の糧となる経験も含んだ決勝でした。
ロベルト・レヴァンドフスキ(バルセロナ)
45+4分の勝ち越しゴールで勝負強さを証明。GKとの1対1で見せた冷静なループはストライカーとしての完成度を示しました。 後半は運動量が落ちたため65分前後に交代となりましたが、一撃で結果を出す価値を示しました。
ペドリ(バルセロナ)
中盤で攻守に存在感。狭い局面でもボールを失わず、ゲームをコントロールしながらレヴァンドフスキのゴールを演出。 守備でも献身的に戻り、試合終盤は痙攣するほどの奮闘を見せました。
フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)
アンカーとして攻守の要。巧みに立ち位置を変えてボールを引き出し、ポゼッションを安定化。 終盤の退場は痛恨ながら、決定機を防ぐプロフェッショナルファウルとしての側面もあり、闘志を示しました。
ヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)
レアル側の攻撃の生命線。45+2分の同点弾は個の力で完結させた圧巻のゴラッソ。 後半も脅威を与え続けたものの、終盤は疲労の影響もあり交代となりました。
ロドリゴ(レアル・マドリード)
守備負担が大きい中でも要所でテクニックを発揮。45+6分の同点弾に繋がるCKの精度が最大の貢献でした。 後半の決定機を決め切れなかった点は結果的に痛手となりました。
キリアン・エムバペ(レアル・マドリード)
76分から途中出場。膝のコンディションが万全ではなく本来のキレは出なかったものの、 終盤の局面でデ・ヨングの退場を誘発するシーンを作るなど、存在感は示しました。
フェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード)
右SHで献身的に上下動し、守備ではバルデへのケアも含めて5バック気味の形を支えました。 攻撃では黒子的役割が中心となり、決定的な違いを作るまでには至りませんでした。
総括
バルセロナは自らのスタイル(ポゼッションとハイプレス)をベースに、試合の流れに応じて細かな修正を重ね、 終盤の数的不利を含めて最後まで耐え切りました。レアルは前半のロングカウンターとセットプレーで食い下がり、 後半序盤は主導権を握りかけたものの、決定機を決め切れずに勝負を逃した印象です。 90分の中に、フォーメーションの工夫と変更、ビルドアップと守備ブロック、プレッシング強度、トランジション対応が凝縮された名勝負でした。