「非紳士的な行為(Unsporting Behaviour)」とは — JFA/IFAB 競技規則の要点
試合の安全性とフェアプレーを損なう行為に対して科される警告(イエローカード)の代表理由の一つ。ここでは現場で迷いやすいケースを整理する。
1. 定義
非紳士的な行為とは、競技の精神に反し、不当な利益を得る/相手に危険を及ぼす/プレーの品位を損ねる行為の総称。主審は状況(意図・危険性・影響)を総合して警告を与える。
2. 代表的なカテゴリーと具体例
① プレー上の不当な利得
- 戦術的ファウル(SPA):相手の有望な攻撃を意図的に止めるホールディング/プッシング/トリッピング 等。
- 無謀なチャレンジ:過度ではないが配慮を欠いた当たりで相手を危険にするタックル。
- 意図的なハンド:ゴールを狙う/攻撃を継続するための明白な意図で腕・手を使う(DOGSO手前のケースを含む)。
- ゴールキーパーのボール放し妨害:キックやスローの動作中に故意に妨害して再開を遅らせる。
② 審判・相手・観客を欺く/挑発する行為
- シミュレーション(ダイブ):接触の誇張・捏造による反則誘発。
- 過度に挑発的なパフォーマンス:相手や観客を煽るジェスチャー、対戦相手の前で過度に威圧する振る舞い。
- 外見の偽装・用具の不正使用:規則に反する装備で有利を得ようとする、ライン外での用具交換の遅延など。
③ ゲームの品位と安全を損なう振る舞い
- ボールの持ち去り等による再開妨害(遅延の一形態):FK/スローイン/CKなどのリスタートを故意に乱す。
- 壁の妨害:フリーキック時に人壁へ走り込んで接触・視界妨害を狙う。
- 過度なゴールセレブレーション:安全や秩序を損なう行為(観客席への過度な侵入、挑発的ジェスチャーなど)。
- スポーツマンシップの欠如:倒れた相手への不要な接触や、プレーと関係のない接触で小競り合いを誘発。
関連注意:異議(Dissent)、再開の遅延、距離不足(FRD)は独立の警告理由として扱われるが、実務上は「非紳士的行為」と同列に管理されることが多い。
3. 提示判断の目安(主審視点)
- 意図・危険性・影響:不当利得/相手の安全/試合の品位への影響を総合評価。
- 局面の価値:有望な攻撃(SPA)か、単なる接触か。
- 継続性:単発か、繰り返しか(繰り返しは警告対象)。
4. カードと再開
- 非紳士的な行為は原則イエローカード(警告)。
- 再開方法は反則の種類に依存(直接FK/間接FK/PK)。カード提示は懲戒であり、再開種別とは別管理。
- 重大・暴力的・DOGSO等に該当する場合はレッドカード(退場)が検討される。
5. 現場でのコーチング要点
- 戦術的ファウルの線引き:ボールへ行く意図が薄く、攻撃を止める目的が前面に出る接触は警告リスク。
- シミュレーション対策:接触の誇張はカード対象。選手には正直なプレーを徹底。
- リスタートの秩序:ボールキープや距離不足の小細工は全て警告候補。素早いセットと距離確保を習慣化。