【戦術分析】アーセナル 2-3 マンチェスター・ユナイテッド|キャリック監督の可変4-2-3-1と4-4-2ブロックが首位撃破(プレミア第23節・2026年1月26日)
2026年1月26日に行われたプレミアリーグ第23節、首位アーセナルと中位から浮上を狙うマンチェスター・ユナイテッドの一戦は、アウェイのユナイテッドが3-2で劇的な勝利を収めました。キャリック監督の戦術が冴えわたったこの試合は、アーセナルのボール支配に対しユナイテッドが堅守速攻で応戦する展開となり、互いに計5ゴールが生まれるスリリングな内容でした。本稿では、両チームの戦術的駆け引きと可変フォーメーション、守備戦術やカウンターの狙い、得点シーンの詳細分析、そして両軍キープレーヤーのパフォーマンスと役割について、戦術に精通した読者にもライト層にも分かりやすく解説します。
試合情報(プレミアリーグ第23節)
| 試合 | アーセナル 2-3 マンチェスター・ユナイテッド |
|---|---|
| 開催日 | 2026年1月26日 |
| 主題 | アーセナルのポゼッション vs ユナイテッドの4-4-2ブロック&カウンター(キャリック監督の現実的ゲームプラン) |
| 勝敗を分けた要素 | 中央封鎖の徹底、トランジションの速さ、枠内シュート効率、個のミドル(再現困難な一撃)とミス誘発 |
キャリック監督の狙いと可変フォーメーション
マイケル・キャリック暫定監督率いるマンチェスター・ユナイテッドは、基本布陣に馴染みの4-2-3-1を採用しました。この試合でも4-2-3-1をベースに据えつつ、試合状況に応じて柔軟に形を変える可変戦術を披露しました。
守備:4-4-2ミドルブロックで中央を閉じる
ユナイテッドは相手保持時に4-4-2のミドルブロックを形成して中央を固めています。具体的には、トップ下のブルーノ・フェルナンデスが前線のブライアン・ムベウモと並んで2トップ気味に前からプレスをかけ、中盤はカゼミロとコビー・マイヌのダブルボランチがブロック中央を締める形です。両ウイングも自陣深くまで戻り4-4の2列を作ることで、中央のスペースを消してアーセナルの攻撃を遅らせました。
この「4-4-2的守備への回帰」により、役割が明確化し、守備の安定性と組織力が向上。相手にボールを持たせても、最も危険な中央(ハーフスペース~バイタル)を空けない設計が徹底されていました。
攻撃:SBの可変とインナーラップで局面を動かす
攻撃時にはフォーメーションの可変性が際立ちました。右SBのアマド・ディアロ(本来FWのアマドをSB起用)と左SBのパトリック・ドルグが状況に応じて高い位置を取り、時にインサイドに絞って中盤に人数をかけるなど、ビルドアップや攻撃の局面で4-2-3-1は流動的に形を変えました。
特に左のドルグはウイングのように内側にカーブするランを繰り返し、ブルーノ・フェルナンデスとのワンツーで中央に飛び出していく動きを見せています。攻撃時の形は、実質的に中盤の底にカゼミロとマイヌが残り、両SBや2列目が押し出されて3-2-5のような陣形になる場面もありました。
相手に応じた「現実路線」:支配を譲って勝ち筋を最大化
今回は相手がリーグ首位のアーセナルということもあり、キャリック監督はボール支配をあえて譲り、守備ブロックの構築と素早いカウンターという現実的なプランを完遂してみせました。攻撃的なポゼッション志向を持ちながらも、相手に応じて戦い方を変える柔軟さが、勝利の前提となっています。
| 局面 | 基本形 | 可変の狙い | キーマン |
|---|---|---|---|
| 守備(非保持) | 4-4-2(ミドルブロック) | 中央遮断→サイド誘導→囲い込みで前進を遅延 | ブルーノ(前線誘導)、カゼミロ&マイヌ(中央封鎖) |
| 攻撃(保持) | 4-2-3-1 | SBの高低・内外で噛み合わせを外す | ドルグ(インナーラップ)、ブルーノ(連結) |
| 攻守転換 | 縦に速いカウンター | 奪って数手でシュートまで到達(効率最大化) | ムベウモ(走力)、ブルーノ(第一走者)、クーニャ(個の決定力) |
アーセナルのポゼッションとユナイテッドの対策
ホームのアーセナルは序盤からボールを支配し、アルテタ監督の下で洗練されたポジショナルプレーでユナイテッド守備網の崩しに挑みました。左SBが中盤に絞ってビルドアップの一角となり、中盤ではデクラン・ライスとマルティン・ズビメンディのコンビが縦パスコースを探ります。前線では右WGのブカヨ・サカが幅を取り、中央(ウーデゴール周辺)との連結で崩しを狙いました。
しかしユナイテッドは「中央を固めてスペースを消し、攻撃を遅延させる」ことに集中。ライスやウーデゴールへの縦パスコースを封鎖しつつ、サイドにボールを誘導する守備を徹底しました。アーセナルは保持できても中央の侵入角度が作れず、攻撃が停滞しやすい時間帯が増えていきました。
| アーセナルの狙い | ユナイテッドの対応 | 試合で起きたこと |
|---|---|---|
| 中盤の縦関係で前進(ライス/ズビメンディ→ウーデゴール) | 中央遮断(4-4-2でバイタルを閉鎖) | 中央で前を向けず、保持はしても決定機が作りにくい |
| サカの幅・左足での局面打開 | 2枚でケアし外へ追い出す(ドルグ+サイドの援護) | オープンプレーの破壊力は限定的、セットプレーで活路 |
| SB/中盤の可変で数的優位を作る | ブロックのスライドと囲い込みで時間を奪う | テンポが落ち、ロング/サイドチェンジ頼みの局面が増える |
ユナイテッドの守備戦術とカウンター攻撃
ユナイテッドの守備戦術は深い4-4-2ブロックを敷いて相手をいなす設計でしたが、勝利の中核は「奪った瞬間に仕留める」カウンターの精度にあります。守備で耐えるだけでなく、奪取直後の数手でシュートまで持ち込むプランが明確でした。
前半はムベウモとブルーノ・フェルナンデスの2人が起点となり相手最終ラインの裏を狙い、ミス誘発から得点を奪取。後半はSBの侵入とミドルシュートという「低確率だが決まれば致命傷」の武器を、限られた回数で最大化しました。加えて、前線からのプレッシングと誘導によって相手のミスを引き出し、得点に直結させた点が実務的に大きい要素です。
| 局面 | 狙い | 具体例(本試合) |
|---|---|---|
| ブロック守備 | 中央を閉鎖し相手の「得意な崩し」を無効化 | ライス/ウーデゴールへの縦パスを遮断、サイド誘導で消耗戦化 |
| ミス誘発 | 圧力とコース制限で「安全なパス」を難しくする | ズビメンディのバックパスミス→ムベウモが回収して得点 |
| 速攻(トランジション) | 奪った瞬間に縦へ。少手数でフィニッシュ | ムベウモの走力、ブルーノの第一走者としての連結 |
| 意外性の侵入 | SBを内側に走らせ守備基準点をずらす | ドルグがインナーラップ→ワンツー連発→中央からミドルで逆転弾 |
得点シーンの詳細分析(時間順)
前半29分 アーセナル(1-0)
右サイドで細かくパスを繋ぎ、ブカヨ・サカがペナルティエリア右角付近からファーへループパス。マルティン・ウーデゴールのダイレクトボレー(折り返し)がユナイテッドDFリサンドロ・マルティネスに当たりオウンゴールとなりました。ブロック攻略の手段として、サイド起点→速い局面変化→フィニッシュ(または折り返し)という有効策が形になった場面です。
前半37分 マンチェスター・ユナイテッド(1-1)
中盤の圧力下でズビメンディのバックパスが乱れ、ムベウモが回収してGKラヤをかわし無人のゴールへ流し込み。同点弾は、ユナイテッドの「ミス誘発→即時回収→最短距離で得点」という設計がそのまま実現した典型例です。
後半50分 マンチェスター・ユナイテッド(1-2)
左SBドルグが高い位置から内側へ侵入し、ブルーノ・フェルナンデスとワンツーを連続。ペナルティアーク手前中央から右足ミドルを放ち、ラヤの指先をかすめてクロスバー下に決まります。SBが中央に入り切ることで守備の受け渡しを崩し、「想定しにくい侵入角度」からのフィニッシュを作りました(VARチェック対象もゴール認定)。
後半84分 アーセナル(2-2)
セットプレー(CK)からサカのインスウィングの高速クロスが起点となり、混戦でこぼれたボールをミケル・メリーノが押し込み同点。オープンプレーで中央侵入が難しい状況下で、セットプレーに活路を見出した形です。ユナイテッドの守備ブロック自体が崩れたというより「局面の不確実性(混戦)」で失点した側面が強いゴールでした。
後半87分 マンチェスター・ユナイテッド(2-3)
途中出場のマテウス・クーニャが、中盤で前を向いてからペナルティエリア手前約20m付近で右足一閃。美しい弧を描いたミドルがゴール右隅に決まり勝ち越し。組織で崩すというより、個の質で「低確率の一撃」を現実に変えた決定打でした。
| 時間 | スコア | 得点チーム | 得点の型 | 戦術的ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 29分 | 1-0 | アーセナル | 右サイド起点(OG) | ブロック攻略はサイド→速いフィニッシュ/折り返しが有効 |
| 37分 | 1-1 | ユナイテッド | ミス誘発→即時回収 | 中央封鎖と圧力で「安全なバックパス」を難しくした |
| 50分 | 1-2 | ユナイテッド | SB侵入→ミドル | 可変(インナーラップ)で守備の受け渡しを破壊 |
| 84分 | 2-2 | アーセナル | CK(混戦) | オープンプレーが詰まる局面でセットプレーが武器 |
| 87分 | 2-3 | ユナイテッド | 個のミドル | 再現性より決定力。終盤の集中の差も反映 |
勝敗を分けた要因
総括すると、勝敗を分けた要因は「決定力とミスの差」です。ユナイテッドは限られた好機をゴールに変換し、ミス誘発からの得点と個のミドルで試合を動かしました。一方のアーセナルは保持で優勢でも中央侵入が難しく、最終的にセットプレーで追いつくのが精一杯。細部の精度と、致命的局面(バックパスミス、ミドル許容)の差がスコアに表れました。
個々のパフォーマンスと戦術的役割
ブルーノ・フェルナンデス:攻撃の司令塔とハードワーカー
トップ下に入りつつ、守備時はムベウモと並ぶ2トップ気味の位置で誘導プレスに参加。攻撃ではドルグとの細かなワンツーで前進を作り、得点シーンの「事実上の起点」として機能しました。数値上の派手さがなくても、攻守の連結と切り替え速度を担保した存在です。
ガブリエル・ジェズス:不在が感じられた万能FW
先発から外れ、後半途中出場。投入後はリンク役として動いたものの、ユナイテッドの中央封鎖の前でコンビネーションが成立しにくく、決定的な影響は限定的でした。ジェズス不在の時間帯は前線の収まり所が不足し、保持の質が「停滞」に寄りやすかった点が目立ちます。
ブカヨ・サカ:起点を作るがフィニッシュを限定されたエースWG
先制点の起点、CKから同点弾を演出するなど、2得点に関与。ただしオープンプレーでは2枚でのケア(ドルグ+援護)により内側の侵入を制限され、決定機創出は限定的でした。サカの質は示しつつも、攻撃がサカ依存に寄る局面が浮き彫りになりました。
デクラン・ライス:奮闘するも中央の圧力に苦戦
配球と回収で奮闘した一方、ユナイテッドの中央封鎖と圧力で前を向く時間を削られ、ゲーム支配の強度が落ちる時間帯がありました。終盤の押し上げやミドルの姿勢は見せたものの、ユナイテッドの「中盤の規律」がライスの影響力を相対的に抑えた試合でした。
| 選手 | 役割 | 戦術的インパクト |
|---|---|---|
| ブルーノ・フェルナンデス(ユナイテッド) | トップ下/守備時は前線誘導 | ブロック守備と速攻の接続点。ドルグとの連結で前進を創出 |
| ムベウモ(ユナイテッド) | 縦の起点/裏抜け | ミス回収→即得点でプランを得点に変換。走力で脅威 |
| ドルグ(ユナイテッド) | 左SBの可変(内側侵入) | インナーラップとミドルで勝負を動かす。守備でもサカ対応の一角 |
| サカ(アーセナル) | 右WG/創造の中心 | 2得点に関与。だがオープンプレーの突破は限定的 |
| ライス(アーセナル) | 中盤の軸(配球・回収) | 奮闘も中央圧力に苦戦。保持の質が上がり切らない要因に |
総括:キャリック戦術の「徹底」と、アーセナルの「停滞」が交差した90分
マイケル・キャリック監督率いるマンチェスター・ユナイテッドは、4-4-2ブロックをベースに中央を固め、アーセナルのポゼッション攻撃を粘り強く耐え凌ぎました。攻撃では少ないチャンスを最大限に活かすカウンターと、SB侵入・個のミドルという「決定打」を重ね、首位アーセナルから価値ある勝利を掴みました。
対するアーセナルは保持で主導権を握りながらも、中央侵入が難しい時間が長く、最終的にセットプレー頼みで追いつくのが精一杯。細部のミス(バックパス)と、終盤に許したミドルの一撃が致命傷となりました。
この試合が示したのは、強豪相手でも「勝ち筋を明確に定義し、役割を単純化して徹底する」ことで結果を取り切れるという事実です。キャリック監督の戦術は、形(4-2-3-1)を保ちながらも局面で可変し、守備と速攻の整合性を高めることで、アーセナルの長所を削り切りました。今後、ユナイテッドがこの設計を継続して再現性を高められるか、そしてアーセナルが低いブロックへの打開策をどこまで増やせるかが、シーズン後半の焦点となるでしょう。