4-3-3 — 特徴・長所・短所
4-3-3は、最終ライン4人＋中盤3人（アンカー＋インサイドハーフ×2）＋前線3人（WG×2＋CF）で構成され、幅（WG）と中央の三角形（アンカー—IH—IH）で前進と崩しを両立させるモダンな基盤フォーメーション。
1. 基本配置と狙い
- 最終ライン：SB—CB—CB—SB。SBは幅と前進の起点、CBは背後とチャンネル管理。
- 中盤3：アンカーが配球・カバー、IH×2がライン間侵入と運搬・前進の推進役。
- 前線3：WG×2は幅と1対1、CFはポスト＆裏で中央のフィニッシュを担う。
2. 守備の原則（前向き圧力&外誘導）
- 前線の片切り：CFが片側を切って方向付け、WGがSBへ連動プレス。
- 中盤の圧縮：IHが縦パスの入口を制限、アンカーはCB前を掃除。
- サイドのトラップ：外へ誘導→SBとWGで挟み、IHが二次回収。
- ライン間管理：IHは背中の10番を監視、CBは背後の深さを統率。
3. 攻撃の原則（幅・内側・三人目）
- 幅の最大化：WGをタッチライン内側1〜2mに張らせ、相手を横に広げる。
- 内側前進：IHがライン間で受け、落とし→差しの三人目でテンポアップ。
- SBの関与：WGの内外に応じて、オーバーラップ／アンダーラップで角度を供給。
- CFの二択：ポストで時間を作る or チャンネルへ斜め裏抜け。
4. 代表的な崩しパターン
- 外→内：SBの外幅→WG内カットイン→IH or CFへ差し込み→ラストパス。
- 内→外：IH前進→WGへワイド展開→クロス三レーン（ニア/ファー/カットバック）。
- 逆サイドアイソレーション：一方に集めて逆WGの1対1を創出。
- アンカー起点：CB→アンカー→IH縦刺し→CF落とし→三人目侵入。
5. 役割（ライン別の要点）
- SB：幅の供給と前進の角度作り。背後管理と即時撤退もセットで。
- CB：チャンネル管理、ライン統率、配球の第一歩（縦パス・斜め）。
- アンカー：配球・スイッチの起点＋中央カバー。セカンド回収の舵取り。
- IH：ライン間受け・運搬・三人目。守備では外ズレでサイド支援。
- WG：幅・1対1・背後脅威。逆サイドはファーポジションの徹底。
- CF：ポスト＆裏の二択、クロスのニア攻撃、プレスのスイッチ役。
6. 長所 / 短所（早見表）
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| WGの幅とIHのライン間で外／内の二択が常設され、崩しのバリエーションが豊富 | アンカー脇（ハーフスペース）を狙われると一気に前進されやすい |
| 前線3枚のプレスで前向きに奪い返す設計がしやすい | SBの攻撃参加が多いと背後露出→トランジション負荷が増大 |
| 可変（2-3-5/3-2-5等）に発展させやすく、相手に応じた調整幅が大きい | CFとIHの距離が開くと中央で分断され、前進が単発化 |
| 逆サイドへのスイッチから質の高い1対1を作りやすい | WGが孤立するとロスト増加、セカンド回収率が低下 |
7. うまくハマる相手 / 苦手な相手
- ハマる：サイド守備が弱い/幅に弱い相手、4-4-2系で中盤2枚の相手。
- 苦手：アンカー脇を突く10番型やボックス中盤（4-2-2-2）、可変で五レーン占有する3-2-5。
8. 可変と微調整（実戦での解法）
- アンカー脇保護：IH片方を一段下げて2ボランチ化（4-2-3-1化）。
- 最終ラインの安定：SB片側を内側化して3バック可変（3-2ビルド）で背後露出を抑制。
- 中央の連結：CFが降りる回数を増やし、IHとの距離を8〜12mで維持。
9. トレーニング（段階的）
- 幅固定ロンド：WGを外に固定し、内側（IH—アンカー）で前向き化（60〜90秒×4）。
- 内→外スイッチ：IH前進→逆WGへスイッチ→クロス三レーンの走路固定。
- 三人目連動：CF落とし→IH差し→SB or 逆WGまで連続（左右各10本）。
- 即時撤退：SB高位置時のロスト→5秒帰陣ドリルで背後露出を最小化。
10. KPI / 観察指標
- ライン間前向き受け回数（IH/10番相当のゾーン）。
- スイッチ成功率（逆サイド到達→1対1創出）。
- アンカー脇突破許容数（自陣中央侵入の回数）。
- 即時撤退成功率（ロスト→8秒以内にブロック形成）。
11. よくある課題と修正
- WG孤立：サポート遅れ → SBの内外選択を事前共有、IHのサイド関与を増やす。
- 中央分断：CFとIHの距離過多 → CFの降りや落とし基準を統一、幅だけに依存しない。
- 背後露出：SB高位置 → 片SB内側化で3バック可変、アンカーの立ち位置を5m深く。
- セカンド回収低下：ライン間の人員不足 → 逆WGの絞りとIHの肘掛け位置で回収率を上げる。
12. コーチングの合言葉（チェックリスト）
- 幅：WGが最大幅、SBは内外で角度供給。
- 間：IHはライン間で半身＆前タッチ。
- 脇：アンカー脇はIHの外ズレで保護。
- 逆：逆サイドスイッチで1対1を創出。
- 撤：ロスト時は即時撤退で背後を守る。