ミドルサード（Middle Third）とは？
ピッチ中央の1/3に当たる運動量と判断密度の高いエリア。守備では奪回と遅らせ、攻撃では前進と前向き化を実現する「試合の舵取りゾーン」です。
1. 定義（ピッチの三区分）
ピッチを縦に3等分したときの中央1/3の帯がミドルサード。自陣と相手陣の「橋渡し領域」で、プレス強度・切替え速度・ライン間の距離管理が結果を左右します。
| 区分 | 位置 | 主目的 | キーワード |
|---|---|---|---|
| ディフェンシブサード | 自陣ゴール側 1/3 | 失点回避／前進開始 | 保護・カバー・安全第一 |
| ミドルサード | 中央 1/3 | 奪回・遅らせ／前進・展開 | 圧縮・誘導・スイッチ・縦ズレ管理 |
| アタッキングサード | 相手ゴール側 1/3 | 得点創出 | 崩し・フィニッシュ |
2. 意味と価値（ゲームの重心）
- 主導権の源：ここで前を向けるか、ここで遅らせられるかが試合のテンポと陣取りを決める。
- 局面転換の中心：ボール奪取→即前進／ロスト→即遅らせ、の質と速度が顕在化。
- ライン間の勝負：中盤の縦・横の圧縮とインサイドレーン活用が最も効く。
3. 守備原則（ミドルサード）
- 中央封鎖→外誘導：カバーシャドウで縦パスを消し、サイドへ圧をかける。
- 遅らせと圧縮：最前線～中盤～最終ラインの縦距離を短く保ち、背後を消す。
- 奪うトリガー：相手の背面トラップ、浮き球の落下点、後ろ向き受け、触れた直後の重心など。
- セカンド回収：弾いた後の内側優先。アーク周辺とハーフスペースに人員を置く。
4. 攻撃原則（ミドルサードの前進）
- 前向き化：受け手の身体の向きと第一タッチで縦を狙う。無理なら外→逆サイド。
- レーン切替：内→外→逆の順で相手の重心を動かし、ハーフスペースへ差し込む。
- テンポ変化：保持で引きつけ→縦パス一撃、受け手の落としで第三者が侵入。
- 安全設計：中央ロストは致命傷。逆サイドの出口とバックドア（CB・GK）を常備。
5. ポジション別の要点
| ポジション | 守備の要点 | 前進の要点 |
|---|---|---|
| CF/ウイング | 内パス遮断のカバーシャドウ／CB→IHの縦パストリガーで圧 | 幅と深さの提示／背後と足元の二択を常に見せる |
| IH/CM（8番） | 縦ズレで圧縮／背後ケアとセカンド回収 | 前向き受け→縦刺し／第三者の関与（落とし→侵入） |
| DM（6番） | バイタル遮断／ライン間管理・カバー位置の修正 | 配給の起点／逆サイドやハーフスペースへの展開精度 |
| SB | 外誘導後の圧力／背後のラン監視 | 幅の確保→内側レーン侵入で数的優位を創出 |
| CB | 背後管理・潰し役のカバー／ライン統率 | 縦パスと斜め差しの判断／逆サイドのスイッチ精度 |
6. 典型的な失敗と対処
- 縦に間延び：前線だけ追い、背後を使われる→ブロック全体で5〜10mの連動を合図語で統一。
- 中央ロスト：真ん中での強引な前進→外へ回し→逆の設計に立ち返る。
- 同サイド渋滞：局所で詰まる→第三者の逆サポートと背後ランで縦横に拡散。
7. トレーニング設計（例）
- 6v6＋フリーマン×2（縦40m×横35m）：中央封鎖と外誘導→縦差しのせめぎ合いを評価。
- ポジショナル 4レーンゲーム：同レーン2枚禁止／内→外→逆のスイッチで前向き化。
- 切替えサーキット：奪って3秒で前進／ロスト3秒で遅らせ。トランジション速度を可視化。
8. コーチング合図（共通言語）
- 「締める！」＝中央圧縮、「外へ！」＝サイド誘導、「逆！」＝サイドチェンジ。
- 「前向き！」＝体の向き修正、「第三者！」＝落とし→侵入の関与指示。
- 「遅らせて整える」＝カウンター対策の初動。
9. すぐ使えるチェックリスト
- 縦距離は短く、中央は閉じているか？
- 攻撃時、前向きの受け手と第三者の連動はあるか？
- 同サイドで詰まったら外→逆の出口を使えているか？
- 切替え3秒で前進／遅らせの基準が共有されているか？