1. 定義（位置と幅の考え方）
ピッチを縦方向に4〜5レーンで分割したとき、中央レーンとサイドレーンに挟まれた帯がハーフスペース。左右に1本ずつ存在します。
| レーン |
位置 |
主な用途 |
特徴 |
| 大外レーン（ワイド） |
タッチライン沿い |
幅の確保／1v1／クロス |
プレッシャーは弱いが角度が限定的 |
| 右ハーフスペース |
右ワイドと中央の間 |
前向き受け／スルーパス／カットバック |
ゴール角度良好／越境が難しく守りにくい |
| 左ハーフスペース |
左ワイドと中央の間 |
同上（逆足のシュート角度◎） |
逆足インスイング／斜め差しが効く |
| 中央レーン |
ピッチ中央線上 |
起点／フィニッシュ |
密度が高くリスクも高い |
2. ハーフスペースの価値（なぜ効くのか）
- 角度優位：ゴールに対して斜め前向きで受けやすく、シュート／スルー／カットバックの三択を同時提示できる。
- 守備の負荷：CB・SB・DMの担当が曖昧になりやすく、マークの受け渡しで遅延が生まれる。
- ライン間攻略：最終ラインと中盤の縦の継ぎ目を突くことで、背後と足元の二重脅威を作れる。
3. 攻撃原則（ハーフスペース活用）
- 第三者の関与：出し手→受け手（HS）→第三者の背後ランでラインを割る（ワンツー／壁パス／フリック）。
- 高さ・幅・奥行：ワイドで幅を取り、CFが奥行を作り、IH/10番がHSで前向きに受ける三位一体。
- やり直しの安全弁：詰まったら逆サイドスイッチか6番（DM）経由で再加速。
- カットバック優先：エンドライン到達→PA内中央への折返しは決定率が高い。
4. 守備原則（相手のHS攻略を止める）
- 内側優先：SBは内切りをまず止める（外へ誘導）。DMはパスコースの遮断。
- 受け渡しの明確化：CB・SB・DMの誰が出るかを事前ルール化（CBが出たらSBは絞る等）。
- 背後警戒：HSで前向きにされる＝背後の即時脅威。ライン統率とGKのコーチングで深さを管理。
5. 典型的コンビネーション（例）
| 名称 |
配置 |
狙い |
ポイント |
| 壁パス侵入（1-2） |
WG外幅／IHがHS／CFが釣る |
ライン間から背後へ一撃 |
IHは前向きワンタッチ、CFはニア誘導 |
| オーバーラップ→カットバック |
SBが外周り／IHがHSで溜め |
最終列の視線分断 |
深さ優先でグラウンダー折返し |
| 逆サイドスイッチ→HS差し |
DM経由で展開 |
ブロック横揺さぶり |
受け手は体の向き先行で一気に前進 |
| 三角形の第三者走 |
出し手-受け手-ランナーの三角 |
マークの受け渡し遅延を突く |
タイミング＞スピード |
6. ポジション別の要点
| ポジション |
攻撃の要点 |
守備の要点 |
| IH/AM（8/10番） |
前向き受け／第一タッチで縦へ。背後ランと足元の二択提示。 |
背中ケア／DMとの住み分けで中央封鎖。 |
| WG |
外で幅→内へ運ぶ／HSの味方と二者択一を作る。 |
外誘導の起点／即時圧のトリガー。 |
| SB |
オーバー/インナーで数的優位追加。 |
内切りストップ／受け渡しの合図語を主導。 |
| CF |
CB間・ニア/ファーの駆け引きでHSの角度を活かす。 |
ロスト直後のネガトラ先導。 |
| DM |
スイッチの起点／逆サイドの安全弁。 |
PA前のセカンド回収とカウンター制御。 |
7. よくある失敗と対処
- 同レーン渋滞：HSに人が重なる→高さ（CF）・幅（WG）・内（IH）の住み分けを徹底。
- 背後の同時脅威不足：足元だけ→第三者の背後ランを常にセットで提示。
- 体の向き不良：受けてから後ろ向き→斜め前向きの事前準備と第一タッチ改善。
8. トレーニング設計（例）
- HS解放ロンド 6v3：HSに置いたフリーマンへ前向き通球→一撃の縦かカットバックで得点化。
- 3レーン制限ゲーム：同レーン2枚禁止／外→HS→背後の三段攻撃を評価。
- ネガトラ3秒＋Dゾーン回収：ロスト即囲い込み→PA手前の回収位置を固定して再攻撃。
9. コーチング合図（共通言語）
- 「前向き！」＝体の向き先行、「第三者！」＝落とし→侵入。
- 「外→中！」＝ワイドからHSへ、「逆！」＝スイッチ。
- 「折り返し！」＝カットバック合図、「内切り止め！」＝守備の指示。
10. すぐ使えるチェックリスト
- HSで前向きに受けられているか？（体の向きと第一タッチ）
- 同時に背後ランを提示できているか？（第三者の関与）
- 詰まったときの逆サイド／DMやり直しの出口を常備しているか？
- 守備は内側優先・受け渡し明確化でHSを封鎖できているか？