ナイアシン(ビタミンB3)|エネルギー代謝と皮膚・神経を支えるビタミン
ナイアシン(ビタミンB3)は、体の中で多くの酵素の補酵素として働き、エネルギー代謝や皮膚・神経の健康維持に関わる重要なビタミンです。
タンパク質からも一部合成されますが、食事からしっかり摂ることが基本になります。
ここでは、ナイアシンの働き・多く含まれる食品・不足や過剰摂取の影響を初心者向けに整理します。
1. ナイアシンの主な働き
- 酵素の補酵素として働く:ナイアシンは、NAD・NADPという形で多くの酵素の「補酵素」として働き、糖質・脂質・たんぱく質からエネルギーをつくる反応を助ける。
- エネルギー代謝全体をサポート:体内のエネルギー産生に関わる反応に広く関与し、日常生活や運動時のエネルギーづくりを支える。
- 皮膚・粘膜の健康維持:皮膚や口の中、消化管などの粘膜の状態を保つのに必要で、不足すると皮膚炎や口内トラブルが起こりやすくなる。
- 神経系の働きのサポート:神経の働きを正常に保つのにも関わり、精神状態や思考のスッキリ感などにも影響する。
エネルギー代謝・皮膚・神経と、全身のコンディションに関わる基礎的なビタミンと言えます。
2. ナイアシンを多く含む食品
ナイアシンは、主に肉類・魚・豆類・ナッツなどのたんぱく質源に多く含まれます。
また、体内では必須アミノ酸トリプトファンからも一部がナイアシンに変換されます。
| 分類 | 食品例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 肉類 | 鶏肉、豚肉、牛肉 など | ナイアシンとたんぱく質を同時に摂取できる。主菜として取り入れやすい。 |
| 魚類 | まぐろ、かつお、さば、さんま など | ナイアシンの他に、良質な脂質やビタミンB群も含まれる。 |
| 豆類・ナッツ類 | ピーナッツ、大豆製品(納豆、豆腐)、アーモンド など | 間食や副菜として取り入れやすく、ナイアシンとともにたんぱく質や脂質も補える。 |
| 穀類 | 全粒粉パン、玄米 など | 精製されていない穀物には、ビタミンB群が比較的多く残っている。 |
「肉・魚・大豆製品・ナッツ」をバランスよく組み合わせることで、自然とナイアシンを摂りやすくなります。
3. ナイアシン不足で起こりうる影響(欠乏症)
ナイアシンが極端に不足すると、ペラグラと呼ばれる欠乏症が起こります。
ペラグラは「3D(Dermatitis:皮膚炎、Diarrhea:下痢、Dementia:認知症)」が特徴とされます。
- 皮膚炎(Dermatitis):日光に当たる部分を中心に、赤くただれる・厚くなる・ひび割れなど、強い皮膚トラブルが出る。
- 下痢(Diarrhea):消化管の粘膜にも影響し、下痢・食欲不振・腹痛などの消化器症状が現れる。
- 認知症様症状(Dementia):重度になると、混乱、記憶障害、感情の不安定さなど、精神・神経症状が現れる。
- 全身のだるさ・食欲低下:エネルギー代謝がうまくいかず、疲労感や体調不良が続く。
現代の日本では重いペラグラはまれですが、極端な偏食やアルコール多飲などはナイアシン不足のリスクを高める要因になります。
4. ナイアシンを摂りすぎた場合の影響(過剰症)
ナイアシンは、通常の食事からの摂取で過剰になることはほとんどありません。
しかし、サプリメントや薬として高用量を摂取した場合には、次のような症状が出ることがあります。
- ほてり(フラッシュ):顔や上半身が赤くなり、熱感やかゆみを伴う。血管が拡張することによる一時的な反応。
- 肝障害:高用量を長期間摂取すると、肝臓に負担がかかり、肝機能障害を起こすリスクがある。
- 胃腸障害:吐き気や胃の不快感などが出ることがある。
コレステロール改善目的の高用量ナイアシン療法などは、医師の管理下で行われるべきものであり、
自己判断でサプリメントを大量に摂り続けるのは避けるべきです。
5. まとめ:エネルギーと皮膚・神経を支える「ベース」のビタミン
ナイアシン(ビタミンB3)は、
- 酵素の補酵素としてエネルギー代謝を支える
- 皮膚や粘膜、神経の健康維持に関わる
- 不足するとペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症様症状)を引き起こす
- サプリメントでの高用量摂取は、ほてりや肝障害リスクがある
という特徴を持つビタミンです。
肉類・魚・大豆製品・ピーナッツなどをバランスよく食事に取り入れることで、無理なくナイアシンを十分に確保しやすくなります。
通常は食事からの摂取で問題ありませんが、高用量サプリの利用は慎重に考えることが大切です。