サッカーの試合中に集中力を保つための具体的トレーニング
サッカーは90分を通して状況が変化し続けるスポーツです。ほんの数秒、集中が切れただけで失点につながることもあります。一方で、集中力は「性格」ではなく、練習によって鍛えられるスキルです。ここでは、試合中に集中力を保つための具体的なトレーニング方法と、日常でできる工夫を詳しく解説します。
1. サッカーにおける「集中力」とは何か
サッカーで言う集中力とは、次のような状態を指します。
- ボール・味方・相手・スペースの情報を正しくつかめている
- 今やるべきプレーをすばやく選び、迷いなく動けている
- ミスや判定への不満に長くとらわれない
つまり、集中力とは「今この瞬間のプレーに意識を向け続ける力」です。この力を鍛えるには、技術練習とセットでメンタルのトレーニングを行うことが重要です。
2. 練習中にできる集中力トレーニング
2-1. インターバル集中トレーニング(集中のオン・オフを意識する)
試合中は、常に100%集中し続けるわけではなく、「集中の波」をコントロールすることが大切です。練習から「集中する時間」と「少し力を抜く時間」を意識的に使い分けます。
例:4分間のミニゲームでのトレーニング
- 1〜3分:攻守ともに全力で集中(常にポジションを修正、声を出す)
- 3〜4分:集中は保ちつつ、呼吸を整えながらプレーを少しシンプルに
- 終了後:何に意識を向けていたかを簡単に振り返る
これを数セット行うことで、「集中のオン・オフ」を自分でコントロールする感覚が身についてきます。
2-2. 「3チェック・ルール」を使ったポジショニング練習
集中力が切れると、立ち位置が曖昧になり、ボールだけを見てしまいがちです。そこで、ボールが動くたびに、次の3つを素早く確認する練習を行います。
- ① ボールの位置
- ② マークすべき相手
- ③ 自分が取るべきスペース
パス回しやポゼッション練習の中で、「ボールが動いたら必ず3チェック」といったルールを設けることで、自動的に周囲を見続ける習慣が身につきます。
2-3. スキャンニング(首振り)の回数を決めて行う
集中力が高い選手ほど、ボールを受ける前に周りをよく見ています。スキャンニングを意識した練習を取り入れます。
- パス練習やポゼッションの中で、「ボールが自分に来る前に最低2回首を振る」と決める
- コーチやチームメイトに、「今、何回くらい見ていたか」を確認してもらう
- 慣れてきたら、ボールが自分を通り過ぎるときにも首を振って情報を取る
「首を振る=集中するスイッチ」として習慣化していくことがポイントです。
2-4. 雑音の中での技術練習
試合では、観客の声・ベンチの指示・相手のプレッシャーなど、雑音が多くなります。その中で集中するための練習です。
- わざと音楽や雑音を流した状態でパス・シュート練習を行う
- コーチがあえていろいろな指示を出す中で、自分の役割に集中する
- 仲間とコミュニケーションを取りながらも、ボールタッチの感覚に意識を戻す
「周りがうるさくても、自分のプレーに戻って来られるか」を確認しながら練習します。
3. 試合中に集中力を保つためのメンタルテクニック
3-1. 「5秒ルール」で切り替えを早くする
ミスをした後にいつまでも引きずると、集中力はどんどん下がります。そこで、次のシンプルなルールを使います。
- ミスをしたとき、落ち込んでいいのは5秒だけと決める
- 5秒経ったら、「今やるべきことは何か?」に意識を切り替える
- 5秒の間に、一度深く息を吸って吐き、「よし、次」とセルフトークする
このルールを徹底すると、集中の途切れる時間を短くでき、試合全体でのパフォーマンスが安定してきます。
3-2. キーワードを使ったセルフトーク
試合中の頭の中は、意識していないとすぐに別のことを考え始めます。そこで、集中したい内容に合わせた短いキーワードを用意します。
- 守備のとき:「ボールとゴール」「前を向かせない」
- 攻撃のとき:「シンプルに」「前を見て」「ワンタッチ」
- 切り替えのとき:「戻る」「プレス」「一歩前へ」
これらの言葉を、プレーが切れたときやランニング中に心の中でくり返すことで、意識が散らばるのを防ぎます。
3-3. 5感を使って「いまここ」に戻るトレーニング
集中が切れると、
- 「さっきのミス…」と過去のプレーを悔やむ
- 「負けたらどうしよう…」と未来の結果を心配する
この状態を止めるために、5感を使って「今」に意識を戻します。
- 足の裏でピッチの感触を感じる(芝・土・スパイクのかかり)
- ボールの音や仲間の声を意識して聞き取る
- 目の前のボール・味方・相手の動きに視線を戻す
これを数秒で行うことで、頭の中の雑音が少しずつ静かになり、集中が戻ってきます。
4. ポジション別・集中力アップの意識ポイント
| ポジション | 集中が途切れやすい場面 | 集中を保つための具体的トレーニング・意識 |
|---|---|---|
| センターバック | ボールが相手陣地にあるとき、ラインコントロールが甘くなる |
・常に味方DFとMFの距離を確認する「3チェック・ルール」 ・相手FWの位置を定期的に指さし確認(ジェスチャーで意識を保つ) ・セットプレー練習で、毎回マーク確認の声を出す習慣をつくる |
| サイドバック | 攻撃参加のあと、戻るタイミングが遅れる |
・オーバーラップの練習で「攻撃→5秒以内に守備ポジションへ戻る」をルール化 ・ボールがサイドチェンジされた瞬間に、首を振って背後を確認する癖をつける ・ミニゲームで、守備時の立ち位置をコーチにチェックしてもらう |
| ボランチ | 試合が落ち着いた時間帯に、周囲の状況把握が甘くなる |
・ポゼッション練習で「ボールタッチごとに首を2回以上振る」ルール ・攻守の切り替え時に「どこを消すか」「誰を捕まえるか」を声に出す ・練習試合で、自分の視野の取り方を動画で確認し振り返る |
| サイドハーフ / ウイング | ボールが反対サイドにあるとき、歩いてしまう |
・ボールが逆サイドにあるとき、「中へ絞る」「背後を狙う」のどちらかを必ず選ぶ ・ランニングメニューに「視線をボールから外さず走る」ドリルを入れる ・プレーが止まった瞬間に、自分のマーカーとスペースを指差し確認する |
| フォワード | ボールが来ない時間帯に、守備のスイッチが遅れる |
・プレス開始の合図となる「トリガー(合図)」をチームで決める ・ミニゲームで、「ボールに一番近いFWが必ず最初の守備のスイッチ」のルール ・自分が関わっていない時間帯でも、相手CBのボールの持ち方・癖を観察する |
5. 日常生活でできる集中力の土台づくり
試合中の集中力は、その日だけで作られるものではありません。普段の生活から、次のような習慣を意識すると、集中しやすいコンディションを整えられます。
5-1. 睡眠・食事・コンディショニング
- 試合前日は、スマホやゲームを長時間続けず、睡眠時間を確保する
- 食事は、糖質・たんぱく質・水分を意識してバランスよく取る
- ウォーミングアップとクールダウンを丁寧に行い、体の張りや痛みを放置しない
5-2. 集中の練習になる日常行動
- 短い時間で構わないので、「今やっていることだけに意識を向ける」時間を作る(読書・ストレッチなど)
- ながらスマホを減らし、「1つの作業をやりきってから次に移る」習慣をつける
- トレーニングノートを書き、1日の中で「集中できた時間」「集中が切れた時間」を振り返る