サッカー選手に多い「ハムストリングスの肉離れ」徹底解説:原因プレー・痛みの部位・回復期間・復帰ステップ・予防法

投稿日:2025年12月19日  カテゴリー:サッカー選手に発生しやすい障害・外傷

サッカー選手に多い「ハムストリングスの肉離れ」徹底解説:原因プレー・痛みの部位・回復期間・復帰ステップ・予防法

ハムストリングスの肉離れ(筋損傷)は、サッカーで非常に多い外傷の一つで、特にダッシュ急加速キックなど「高速で脚を振る/伸ばす」局面で発生しやすいのが特徴です。 再発率が高い傾向があるため、痛みが引いた=完治ではなく、復帰までの段階設計予防が重要になります。

1. 原因となるプレー(発生しやすい局面)

ハムストリングスは「膝を曲げる」「股関節を伸ばす」という働きを持ち、走行中は特に 遊脚期の終盤(脚が前に出て着地する直前)で強い負荷を受けます。 このタイミングは筋肉が伸ばされながら力を発揮する(エキセントリック収縮)になりやすく、損傷の典型局面です。

原因となりやすいプレー なぜ起こるか(負荷の特徴) 現場で多い状況
全力ダッシュ/スプリント 遊脚期終盤でハムが強いエキセントリック負荷を受ける 裏抜け、カウンターの加速、追いかける局面
急加速・急減速 短時間で高出力が必要。筋の反応遅れや疲労で破綻しやすい 切り返し直後の一歩目、守備の寄せ
ロングキック/シュート 振り脚のスイングと膝伸展局面で張力が増える 無理な体勢でのシュート、連続キック
ハイキック/ストレッチング動作 股関節屈曲+膝伸展で筋が強く伸ばされる 浮き球処理、競り合いで脚を高く上げる
疲労が溜まった終盤 フォーム崩れ、神経筋制御の低下、出力低下でリスク増 試合終盤、連戦、暑熱環境

2. 典型的な痛みの部位(どこが痛くなりやすいか)

痛みは「太ももの裏(後面)」に出ますが、損傷部位は複数パターンがあります。 特にサッカーでは、外側のハム(大腿二頭筋)や、筋腱移行部(筋肉と腱の境目)に起こりやすい傾向があります。

痛みの部位 特徴 現場での訴え
太もも裏の外側 大腿二頭筋の損傷が多い。スプリントで起こりやすい 「ダッシュした瞬間にピキッ」
太もも裏の中央 筋腹の損傷。圧痛(押すと痛い)や張り感が出る 「走ると張る」「踏み込むと痛い」
お尻の付け根付近 近位部(坐骨付近)に痛み。重症化・長期化しやすいことがある 「ストライドを伸ばすと痛い」
膝裏に近い 遠位部に痛み。キックや減速で違和感が出ることも 「蹴ると怖い」「減速で痛い」

3. 回復までの期間(目安)

回復期間は損傷の程度(軽度〜重度)と部位(筋腹か、腱に近いか)で大きく変わります。 現場では「痛みが消えたからOK」とすると再発しやすいため、期間はあくまで目安として、 機能評価(走れる・跳べる・切り返せる)とセットで判断します。

重症度 状態のイメージ 回復目安 注意点
軽度 張り・軽い痛み。歩行は可能、腫れや内出血は軽い 1〜2週 ダッシュ再開のタイミングで再発しやすい
中等度 明確な痛み、押すと強い痛み。走ると痛い 3〜6週 伸張性負荷(スプリント/ストライド)で再燃しやすい
重度 断裂に近い。内出血が強い、力が入らない 6週〜3か月以上 医療評価が必須。近位部や腱付近は長引きやすい

4. 復帰に必要なステップと注意点

復帰は「痛みゼロ」だけでは不十分で、ハムストリングスに必要な 出力伸張性耐性スプリント能力疲労下での制御を段階的に戻す必要があります。 特に再発の多くは、スプリント強度の引き上げ(80〜100%)の段階で起こります。

フェーズ 目標 実施例(代表)
急性期 痛み・炎症の管理、悪化防止 無理に伸ばさない。痛みのない範囲で軽い可動、歩行の質を整える
回復期 可動域と基礎筋力の回復 ヒップヒンジ、ブリッジ、軽いRDL、アイソメトリック(静止)収縮
再構築期 伸張性耐性(エキセントリック)の強化 ノルディック系、スライダー・カール、エキセントリックRDL(段階的)
走行復帰期 ラン〜スプリントの強度を戻す 直線ジョグ→ラン→流し(50%)→70%→80%→90%→100%
競技復帰期 方向転換・キック・対人・疲労下の再現 加速減速、切り返し、ボールありスプリント、段階的な対人

復帰判断で特に注意すべきポイント

  • スプリント強度を急に上げない:80%を超える段階でリスクが上がるため、数回〜数日単位で段階的に。
  • 「張り」が出たらサイン:痛みがなくても、張りの増加は負荷過多の可能性。翌日の反応も確認。
  • ストライド(歩幅)を管理:スプリントは歩数よりもストライド増大が負荷を上げやすい。
  • 疲労下テスト:試合は疲労下で起こる。疲れてもフォームが崩れないかを最終確認する。

5. 予防方法(再発予防を含む)

ハムストリングス肉離れの予防は、単に「柔らかくする」ではなく、 伸張性筋力スプリント耐性体幹〜骨盤の制御練習負荷の管理を組み合わせることが重要です。

予防の柱 具体策 ポイント
伸張性筋力 ノルディック、スライダー・カール、RDLのエキセントリック 週1〜2回を継続。痛みゼロ・質優先で漸進
ヒップ主導の出力 ヒップヒンジ、デッドリフト系、ヒップスラスト 骨盤が前傾しすぎない。臀部とハムの協調を作る
走行ドリル Aスキップ、ハイニー、ドリル→流し→短いスプリント フォームを作ってから速度を上げる
柔軟性と可動域 動的ストレッチ(練習前)、静的は練習後に短時間 無理な長時間ストレッチで痛みを誘発しない
負荷管理 連戦・急なスプリント量増加を避ける 「急に100%を増やす」が最も危険。週単位で増加を管理

6. まとめ

ハムストリングスの肉離れは、サッカーの「スプリント・加速・キック」に直結する外傷であり、再発が多いのが最大の特徴です。 重要なのは、痛みが消える前後で止めるのではなく、伸張性耐性スプリント強度を段階的に戻し、 最終的に疲労下でも崩れない状態まで作ることです。 予防は、ノルディック等の伸張性トレーニング、ヒップ主導の出力強化、走行ドリル、負荷管理をセットで継続してください。

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