サッカー選手のオスグッド・シュラッター病(成長期)|原因・症状が出やすいプレー、膝下の骨変化と指導(アイシング・休養・ストレッチ)
投稿日:2025年12月24日
カテゴリー:
サッカー選手に発生しやすい障害・外傷
サッカー選手のオスグッド・シュラッター病(成長期)|原因・症状が出やすいプレー、膝下の骨変化と指導(アイシング・休養・ストレッチ)
オスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter disease)は、成長期の膝前面痛の代表的な障害で、
膝下(脛骨粗面:けいこつそめん)に付着する膝蓋腱が繰り返し引っ張ることで、骨の成長部(骨端線周辺)に炎症や微小損傷が起こる状態です。
サッカーでは「走る・止まる・蹴る・跳ぶ」を高頻度で行うため、特に発生しやすい傾向があります。
成長期に発生する主な原因(なぜ成長期に起きるのか)
| 要因 |
内容 |
サッカー現場で起こりやすい例 |
| 成長スパート(身長が急に伸びる) |
骨の伸びに対して筋・腱の伸びが追いつかず、張力が増える |
急に身体が硬くなった/ダッシュやキックで膝前が痛い |
| 膝蓋腱の牽引ストレス(引っ張り) |
大腿四頭筋の強い収縮が膝蓋腱を介して脛骨粗面を反復牽引 |
連続シュート、連続ダッシュ、切り返しの反復 |
| 練習量・強度の急増 |
腱・骨の許容量を超えて炎症が出やすい |
合宿、連戦、チーム移籍・昇格で練習が増える |
| 柔軟性低下(大腿四頭筋・ハム・腸腰筋など) |
膝周囲の張力が高まり、膝蓋腱への負担が増える |
股関節が硬く、蹴り足・踏み込み足の負担が偏る |
| フォーム・アライメント(ニーインなど) |
膝前面への局所負荷が増える |
着地や減速で膝が内側に入る、足部が不安定 |
症状の特徴(痛みの部位と出方)
痛みの中心は膝のお皿の少し下(脛骨粗面)です。押すと痛い、運動後に痛む、膝下が出っ張ってきたように感じる、といった訴えが典型です。
進行すると、運動中にも痛みが出たり、正座・しゃがみ込み・階段で痛むことがあります。
| 場面 |
症状 |
チェックポイント |
| 運動後 |
膝下(脛骨粗面)がズキズキする |
練習後〜夜に痛みが増える/アイシングで軽減することが多い |
| 運動中 |
ダッシュ・キック・ジャンプで痛い |
痛みでフォームが崩れる(蹴れない、減速できない) |
| 触診 |
脛骨粗面の圧痛、熱感 |
左右差(腫れ、出っ張り)を確認 |
| 日常動作 |
階段、しゃがみ込みで痛い |
痛みが日常まで波及しているなら負荷過多のサイン |
症状が出やすいプレー・動作(サッカー特有のリスク)
| 動作 |
サッカーでの具体例 |
膝下に負担がかかる理由 |
| キック(特に強いシュート) |
シュート練習、ロングキック、FK |
大腿四頭筋が強く働き膝蓋腱牽引が増える |
| ダッシュと減速 |
裏抜け、プレス、カウンター対応 |
膝伸展機構が反復で高負荷(加速・ブレーキ) |
| ジャンプ・着地 |
ヘディング、競り合い |
着地局面でエキセントリック負荷が増えやすい |
| 切り返し・方向転換 |
1v1、守備のステップ、細かいターン |
膝が内側に入る(ニーイン)と局所負荷が上がる |
| 深いしゃがみ込み |
低い重心姿勢の守備、スクワット系補強 |
膝屈曲が深いほど膝蓋腱〜脛骨粗面の負担が増える |
膝下の骨の変化(脛骨粗面に何が起きているか)
成長期の脛骨粗面は、まだ完全に硬い骨ではなく、成長に関わる組織(骨端線周辺)が含まれます。
そこに膝蓋腱が繰り返し牽引することで、炎症、微小損傷、骨の突出(隆起)が起こりやすくなります。
その結果として「膝下の出っ張り」が目立つことがあります。
| 変化 |
現場で見えるサイン |
注意点 |
| 脛骨粗面の圧痛・腫れ |
押すと痛い、熱っぽい |
痛みが強い時期は負荷を下げる優先度が高い |
| 隆起(出っ張り) |
左右差が出る、骨が出てきた感じ |
突出自体は残ることもあるが、痛み管理が重要 |
| 慢性化 |
痛みが長引き、キックやジャンプで再燃 |
「我慢して続ける」が最も悪化しやすい |
指導の中心:アイシング・休養(負荷調整)・ストレッチ
1) アイシング(運動後の炎症コントロール)
アイシングは「治癒そのもの」ではなく、運動後の炎症・疼痛を抑えて回復を助ける手段です。
痛みが出た日は特に、練習後のケアとして導入しやすい方法です。
| タイミング |
目安 |
ポイント |
| 練習・試合直後 |
10〜15分 |
膝下(脛骨粗面)中心。皮膚トラブル防止のため直接当てない工夫をする |
| 痛みが強い日の夜 |
10分程度を追加 |
冷やし過ぎは不要。痛みの推移を見ながら |
2) 休養・負荷管理(最重要)
オスグッドは「成長期に起きる牽引性の過負荷障害」なので、練習量・強度を調整しない限り改善しにくいのが現実です。
完全休止が必要なケースもありますが、多くは痛みを増やす動作(キック強度、ジャンプ量、ダッシュ量)を段階的に削減し、
痛みが落ち着く範囲で継続可能な負荷へ落とし込むことが現場的です。
| 調整対象 |
優先して減らすもの |
代替(続けやすい内容) |
| キック |
シュート反復、ロングキック、強いインステップ |
パス中心、弱〜中強度、フォーム練習へ |
| 走る量 |
全力ダッシュ反復、坂道、連続の切り返し |
ジョグ、直線走、低強度の有酸素(痛みが出ない範囲) |
| 跳ぶ/着地 |
ヘディング反復、連続ジャンプ |
ジャンプを伴わない戦術練習、判断系トレーニング |
| 筋トレ |
深いスクワット、高回数ジャンプ系 |
痛みが少ない範囲の補強(体幹、股関節周囲、上半身) |
3) ストレッチ指導(大腿四頭筋・腸腰筋・ハムストリングス中心)
成長期は筋の硬さが出やすく、膝蓋腱の牽引ストレスを増やします。特に大腿四頭筋の硬さはオスグッドの負担因子になりやすいため、
日々のルーティンとしてストレッチを整えることが重要です。痛みを誘発しない範囲で実施します。
| 部位 |
狙い |
目安 |
ポイント |
| 大腿四頭筋 |
膝蓋腱の牽引ストレスを下げる |
20〜30秒 × 2〜3回 |
腰反りで誤魔化さず、股関節前面が伸びる位置を作る |
| 腸腰筋(股関節前面) |
骨盤前傾・大腿四頭筋優位を抑える |
20〜30秒 × 2〜3回 |
骨盤を立てて前面を伸ばす。膝前面痛が増えない角度で |
| ハムストリングス |
膝周りの張力バランスを整える |
20〜30秒 × 2〜3回 |
反動なし。痛みが出るほど強く引っ張らない |
| 下腿(腓腹筋・ヒラメ筋) |
下肢全体の連動性を高める |
20〜30秒 × 2〜3回 |
足関節の硬さはフォームにも影響。軽めから継続 |
補強の考え方(痛みが落ち着いてきたら)
痛みが強い時期は「膝を強く使う補強(深いスクワット・ジャンプ系)」は避け、股関節・体幹の安定化を先に固めます。
痛みが落ち着いたら、膝伸展機構の筋力を段階的に戻し、キック・ジャンプ動作へ復帰させます。
| 段階 |
優先 |
内容例 |
狙い |
| 痛みが強い |
非疼痛の補強 |
体幹(プランク等)、中殿筋(クラム等)、ヒップヒンジ練習 |
膝に頼らない動作を作る |
| 落ち着いてきた |
浅い可動域の下肢強化 |
浅めスクワット、ステップアップ低段差 |
膝への負担を管理しながら耐性を戻す |
| 復帰期 |
競技動作へ |
キック強度を段階的に上げる、ジャンプ量を少しずつ増やす |
再燃しない負荷設計 |
現場での運用ポイント(悪化サインと戻し方)
| 悪化サイン |
よくある状況 |
対応 |
| 練習後〜翌日に痛みが増える |
シュート反復・ダッシュ反復を入れた日 |
次回はキック強度・本数、スプリント量を落とす |
| 押して強い痛み/熱感が強い |
連戦・合宿期間 |
数日単位で強度を下げ、アイシング+睡眠・栄養を優先 |
| 日常(階段・しゃがみ)でも痛い |
我慢して続けている |
競技負荷を明確に下げる(必要なら一時休止)。医療評価も検討 |
まとめ
- オスグッドは成長期の脛骨粗面が、膝蓋腱の反復牽引で炎症・微小損傷を起こす障害。
- サッカーではキック強度、ダッシュと減速、ジャンプ着地、切り返しで症状が出やすい。
- 膝下の出っ張り(隆起)を伴うことがあり、痛みの管理と負荷調整が最重要。
- アイシングは疼痛・炎症コントロールの補助。根本は休養(負荷管理)とストレッチで牽引ストレスを下げる。
- 補強は痛みが落ち着いてから段階的に。深い膝曲げやジャンプ系は再燃しやすいため設計が必要。