オーバーラップ

投稿日:2025年10月29日  カテゴリー:オフザボールの動き

オーバーラップ — 動き方・使う状況・目的

ボール保持者(主にウイングやインサイドハーフ)の外側(タッチライン側)を、後方の味方(多くはサイドバック)が追い越して前進するオフザボールの連携。相手のマークを引きつけて数的優位とクロス/カットインの二択を作る。

1. 全体像(いつ・何を狙うか)

  • 状況:サイドで保持者が前を向けた/相手SBが保持者へ食いついた/中盤で時間があり展開の余裕がある。
  • 狙い外レーンの幅を確保し、相手の守備を横に広げる。クロスの角度内側カットインの通路を同時に作る。
  • 前提:タイミングの共有(出し手の顔上げが合図)/後方のカバー(CBやDHが空いた背後を管理)。

2. 動き方(ステップ分解)

  1. 準備位置:SBは味方WGの斜め後方で待機し、相手SBの背中側に視線を置く。
  2. 合図の確認:出し手(WG/IH)が顔を上げる・トラップが決まる瞬間をトリガーに。
  3. 走り出し:タッチライン沿いに最大2~3歩で加速。相手の外肩を越える角度で。
  4. 受け方:縦パスなら前向きの一歩目で運ぶ。足元で受ける場合も体は前へ半身
  5. 二択の提示:受けたらクロス/折り返し。受けない場合はおとりとなり、保持者の内側カットインを助ける。
  6. リスク管理:攻撃不成立時は最短で帰陣。中盤と声でカバーリングを確認する。

3. 使う場面の具体例

  • サイド固定→突破:WGが足元で引きつけ、SBが外をスプリント。引き出して→縦スルーでファイナルサード侵入。
  • 中盤スイッチ後:IHからサイドへ展開、展開と同時にSBが走り出す。相手のスライド遅れを突く。
  • カウンター:奪取後、WGが内へ運び、SBが外レーンで最短ルート。幅+人数を一度に補う。

4. 目的(戦術的効果)

  • 幅の確保と圧縮解除:外レーンを走ることで守備の横圧縮を解き、ライン間を広げる
  • 二択の強制:相手SBに保持者かオーバーラップかの選択を迫り、遅れた方のコースを使う。
  • クロス角度の獲得:エンドライン付近まで入ってニア/ファー双方へ質の高い配球が可能。

5. メリット / デメリット(早見表)

メリット デメリット
外幅を作り、内側のカットインや縦突破が通りやすい 奪われた際に背後のスペースを突かれるリスク
相手SBを引き出し、CBとの間(チャンネル)を開けられる タイミングが早すぎ/遅すぎだとオフサイドや無駄走り
クロスの質と選択肢(折り返し・グラウンダー)が増える 走力負担が大きく、終盤の運動量管理が必要

6. よくあるミスと修正

  • 合図前スタート:出し手が準備できていない → 顔上げ・足のセットをトリガーに統一。
  • 走路が内に寄る:保持者と重なりコース消失 → タッチライン沿いを徹底し幅を維持。
  • 受けて前を向けない:体が閉じている → 半身で受けて1タッチ目を前へ
  • 帰陣が遅い:ボールロスト後に背後を使われる → 即時撤退と中盤のカバー声掛け。

7. ルール・マナー(オフサイド/接触回避)

  • オフサイド管理出し手がボールを離す瞬間に最終ラインより前に出ない。斜めの走路でラインと並走しない。
  • 進路共有:WGと「外(自分)/内(WG)」の役割を声とジェスチャーで即時確認。
  • 接触回避:相手SBの外肩を越えるときは腕の使い方に注意し、不当な押しは避ける。

8. 習得ドリル(段階的)

  1. 合図→スプリント:2人組。顔上げ合図→外レーン2~3歩最大加速(10本×2)。
  2. 壁パス+縦抜け:WGが足元で引きつけ、SBが外→縦スルー→クロスまで連続。
  3. 三人目の関与:IHを加え、SBおとり→WGカットイン→IH受けの二択を反復。
  4. 実戦パターン:サイド圧縮を受けた場面で、早い展開→オーバーラップ→ニア/ファーへの配球まで。

9. コーチングの合言葉(チェックリスト)

  • :出し手の準備/相手SBの重心を同時に見る
  • 合図→2歩全開。最初の加速で差を作る。
  • タッチライン沿いを使い、レーンを広げる。
  • :受けは半身+前タッチ
  • :ロスト時は即時撤退、背後の管理を徹底。

※オーバーラップは「幅・合図・帰陣」が核心。走るだけでなく、出し手の選択肢創出とリスク管理まで設計して再現性を高めよう。

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