マンチェスター・ユナイテッド 3-2 フラム(2026年2月1日・プレミアリーグ第24節)戦術分析|キャリック監督の采配と可変4-2-3-1の勝因
マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)は2026年2月1日のプレミアリーグ第24節でフラムをホームに迎え、3-2で勝利。後半アディショナルタイムの決勝点で、オールド・トラッフォードは歓喜に包まれました。 本稿では、暫定指揮官マイケル・キャリック監督の采配・戦術にフォーカスし、試合の流れ、フォーメーションの可変性、攻守の狙い、交代策、キープレイヤーの役割、フラムへの対応、そして勝敗を分けた要因を整理します。
試合の流れとスコア経過
| 時間 | 出来事 | スコア | 補足(戦術・采配の観点) |
|---|---|---|---|
| 前半19分 | ブルーノのFK → カゼミーロがヘディングで先制 | マンU 1-0 | セットプレーで先手。キッカーの質と配置が機能。 |
| 後半56分 | カゼミーロのスルーパス → クーニャがニア上に強烈弾 | マンU 2-0 | 縦に速い攻撃の象徴。背後への一刺しで守備ブロックを破壊。 |
| 後半85分 | マグワイアがPK献上 → ヒメネスが決める | マンU 2-1 | リード時の守備が受け身になり、対応が後手に。 |
| 後半90+1分 | フラム途中出場「ケビン」が左からスーパーゴール | マンU 2-2 | サイドのチェックが遅れ、自由に持たせた隙を突かれる。 |
| 後半90+4分 | ブルーノの右からのクロス → シェシュコが反転シュートで決勝点 | マンU 3-2 | 交代策(シェシュコ投入)が直結。最後まで勝ちに行く姿勢が結実。 |
2点リードから終盤に追いつかれる展開となりましたが、同点後も攻撃姿勢を崩さず、最後に勝ち越し。 キャリック暫定体制のリーグ戦は無傷の3連勝となり、勝ち点41で4位を堅持しています。
使用フォーメーションと可変性|基本は4-2-3-1、守備は4-4-2化
マンチェスター・ユナイテッド 先発(4-2-3-1)
| ポジション | 選手 | 役割・特徴 |
|---|---|---|
| GK | セネ・ラメンス | 最終ライン統率とシュートストップ。後半序盤のFKを好守で凌ぐ。 |
| RB | ディオゴ・ダロト | 右の上下動と幅確保。攻撃時はオーバーラップで前進を支援。 |
| CB | ハリー・マグワイア | 空中戦と統率。終盤にPK献上も、全体のライン維持を担う。 |
| CB | リサンドロ・マルティネス | 対人とカバーリング。ビルドアップで縦パス供給役。 |
| LB | ルーク・ショー | 左の推進力とクロス。守備ではブロック形成に集中。 |
| CM(ボランチ) | カゼミーロ | 守備の要+攻撃のスイッチ。先制点・アシストで決定的に貢献。 |
| CM(ボランチ) | コビー・メイヌー | 運動量と守備強度で中盤を制圧。プレスの起点として機能。 |
| 右WG | アマド・ディアロ | カットインと1v1で変化。守備時の戻りも含めて右を支える。 |
| トップ下 | ブルーノ・フェルナンデス | 自由度の高い司令塔。2アシスト(FK・決勝点アシスト)で勝負を決める。 |
| 左WG | ブライアン・ムベウモ | 突破とクロス、加えて守備面の献身でバランスを取る。 |
| CF | マテウス・クーニャ | 背後の抜け出し+ポスト。56分の追加点で試合を動かす。 |
可変のポイント
| 局面 | 形 | 狙い | この試合での具体例 |
|---|---|---|---|
| 守備(高い位置) | 4-4-2(ブルーノが前に出て2トップ気味) | CB〜アンカーのパスコースを限定し、前向きの回収を狙う | クーニャ+ブルーノで最初の圧力、両WGが戻って4-4ブロックを形成。 |
| 守備(押し込まれた時) | 4-4-1-1〜4-4-2 | 中央を締め、サイドに追い出してクロス対応 | カゼミーロの危険エリア管理+メイヌーのカバーで中央突破を抑制。 |
| 攻撃 | 4-2-3-1を保ちつつ局所的に流動化 | ブルーノの移動で起点を複数化、ハーフスペース活用 | 決勝点でブルーノが右へ流れてクロス=位置交換で守備を横に揺さぶる。 |
攻撃面の狙い|ブルーノ解放+両翼の幅と裏抜けで“縦の破壊力”を最大化
1) ブルーノのトップ下起用が攻撃の軸を再構築
キャリック監督の就任後に最も明確な変化は、ブルーノ・フェルナンデスをトップ下に据え、前線での自由度を上げた点です。 本来の適性に戻したことで、中央での創造性と最終局面の選択肢が増加。セットプレーの質も含め、試合を決める局面に直結しました。
2) 両ウイング(アマド/ムベウモ)で幅を取り、中央に“穴”を作る
右にアマド、左にムベウモ。両サイドに突破力のあるウイングを置くことで相手SB背後を意識させ、守備ブロックを横に広げる狙いが見えました。 幅を取ることで中央のブルーノやCFにスペースが生まれ、DF間の受け直しや背後への抜け出しが機能しやすくなります。
3) クーニャの背後ラン×カゼミーロの縦パス=2点目の構造
56分の追加点は、カゼミーロの“裏へ刺す縦パス”と、クーニャの“動き出しのタイミング”が噛み合った典型例です。 角度のない位置からニア上を射抜いたフィニッシュも含め、「縦に速くゴールへ向かう」というキャリック色が濃く表れました。
攻撃の要点まとめ
| テーマ | 狙い | 効果 |
|---|---|---|
| ブルーノの自由度 | 起点の複数化/ラストパスの増加 | FKアシスト+決勝点アシスト(2A) |
| 両翼の幅 | 相手守備の横スライド誘発 | 中央のスペース創出、背後ランの余地 |
| 縦に速い攻撃 | 整う前に決定機を作る | 2点目・決勝点が速攻的局面から発生 |
守備面の狙い|ハイプレス+ブロック併用、ただし終盤の“受け身”が課題
1) 前線からの圧力でフラムのビルドアップを制限
キャリック体制のキーワードは、ボール非保持時のハードワークと連動プレス。 この試合でもクーニャ+ブルーノが前から寄せ、両WGとボランチがパスコースを消しながら連動し、フラムの前進を制限しました。
2) 押し込まれた局面では4-4系ブロックで中央を封鎖
一方で、フラムの圧力が上がった後半立ち上がりは自陣対応の時間帯も増加。 その局面では4-4-1-1〜4-4-2に近いブロックを形成し、中央の危険エリアをカゼミーロが管理、メイヌーがカバーする形で耐えました。
3) 終盤の失点局面:リード時のゲーム管理が次のテーマ
2点リード後、ラインが下がり気味になり、85分のPK献上(対応の遅れ)、90+1分の同点弾(サイドで自由に持たせた)に繋がりました。 “逃げ切り局面の圧力回避”や“交代選手への即時対応”は、今後のマネジメント課題として整理できます。
| 守備局面 | 機能した点 | 露呈した課題 |
|---|---|---|
| 前半〜中盤 | 前線連動プレスで中央の前進を制限 | — |
| 後半立ち上がり | ブロック形成+GK好守で失点回避 | 押し込まれる時間が増え、セカンド回収が難化 |
| 終盤(2点リード) | 守備交代で立て直しの土台は作った | 受け身化 → PK献上/サイドのチェック遅れ |
交代策の影響|“守る交代”ではなく“勝ちに行く交代”で決着
シェシュコ投入が試合を決めた
キャリック監督の交代策で最大のトピックは、シェシュコ投入が決勝点に直結した点です。 2点リードの状況で、単に守備固めに寄せず、攻撃のカードを切って「試合を終わらせに行く」意図が明確でした。 投入後すぐに空中戦で脅威となり(ポスト直撃の場面も含む)、90+4分に決勝点を奪取。采配が勝敗を動かした象徴的な結末です。
終盤の守備テコ入れ(マズラウィ投入)
フラムがサイドから圧力を強めた局面で、ダロトに代えてマズラウィを投入。 守備強度を上げて再度崩されないように調整し、同点直後の時間帯でチームを落ち着かせる役割を担いました。
| 交代・打ち手 | 意図 | 効果 |
|---|---|---|
| シェシュコ投入(クーニャと交代) | 前線の脅威維持/勝ち切るためのカード | 決勝点(90+4分)で采配が直結 |
| マズラウィ投入(終盤のSB交代) | サイド守備の安定化 | 同点直後の崩壊を防ぎ、再加速の下地 |
キープレイヤーと役割
| 選手 | ポジション | 主な役割 | この試合の決定的貢献 |
|---|---|---|---|
| ブルーノ・フェルナンデス | トップ下 | 攻撃の心臓/プレスの先導/局面打開 | 先制点アシスト(FK)+決勝点アシスト(右からクロス) |
| コビー・メイヌー | ボランチ | 中盤の機動力/プレス強度/カバーリング | 中盤のデュエルで優位、フラムの中央前進を抑制 |
| カゼミーロ | ボランチ | 危険管理/セットプレー参加/縦パス供給 | 先制点(ヘッド)+2点目アシスト(裏へのスルーパス) |
| マテウス・クーニャ | CF | 背後の抜け出し/前線プレスの起点 | 56分の追加点で試合を優位に進める |
| ベンヤミン・シェシュコ | FW(途中出場) | 空中戦・決定力で別の脅威を付与 | 90+4分に決勝点(反転→右足で右上へ) |
フラムへの対応|中央制限と“横揺さぶり”で勝機を作る
フラムは流動的なポジションチェンジとショートパスで前進を狙うチームであり、中央に起点を置いてビルドアップする傾向があります。 マンUはメイヌーとカゼミーロを軸に中央の前進を制限し、ブルーノもアンカーへのパスコースを切る位置取りで支援。 結果としてフラムはサイド経由に寄りやすくなり、前半は決定機の質を抑え込めました。
攻撃では、相手守備ブロックを“横に広げて中央を突く”設計が見られました。 両WGが幅を取り、ブルーノが左右に流れて起点を作ることで、相手CBの視線と立ち位置をズラし、背後ラン(2点目)や中央のマーク曖昧化(決勝点)に繋げています。
勝敗を分けた決定的要因(采配・戦術)
| No. | 要因 | 内容 | この試合での裏付け |
|---|---|---|---|
| 1 | ブルーノのトップ下起用(解放) | 創造性と最終局面の質を最大化 | 2アシストで勝利に直結 |
| 2 | ハードワークと連動プレス | 前線から限定し、主導権を握る時間を作る | 前半の安定、追加点の土台 |
| 3 | 若手・新戦力の積極活用 | メイヌー、クーニャ、ムベウモ、シェシュコらを機能させる | 得点・決定機の多様化 |
| 4 | 勝負所での攻撃的交代 | 守り切りではなく、勝ち切りのカードを切る | シェシュコ決勝点 |
| 5 | セットプレーの活用 | 先制点で試合の設計を優位にする | FK→カゼミーロの先制点 |
総括|可変4-2-3-1と“勝ちに行く采配”が劇的勝利を導いた
マンU 3-2 フラムは、終盤に2点差を追いつかれながらも、最後に勝ち切った一戦でした。 その背景には、キャリック暫定監督が就任直後から徹底している「ブルーノの解放」「前線からのハードワーク」「縦に速い攻撃」「勝負所での攻撃的交代」があります。 守備面では終盤の受け身化という課題も残した一方、同点後に再び前へ出て勝ち越すメンタリティと設計は、トップ4争いにおける強度を示しました。
可変性は大きく崩さず、基本布陣4-2-3-1を軸に“局面の形”を変える運用で、戦術の再現性と選手の自由度を両立。 劇的勝利の中心には、采配と戦術設計を勝点3へ変換したキャリックの決断力がありました。