棘下筋(きょくかきん)とは?肩の外旋と安定性を支えるローテーターカフの要|鍛え方・ストレッチ・セルフケアを解剖学的に解説
棘下筋(infraspinatus)は、肩の深層にある回旋筋腱板(かいせんきんけんばん:ローテーターカフ)の一つで、 主に肩関節の外旋(がいせん:腕を外側へひねる動き)と、肩関節の安定化に強く関わります。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
この記事では、棘下筋の基本(位置・働き・日常動作)、代表的トレーニング(初級〜上級)、ストレッチとセルフケア(動的/静的)を、 初心者にも理解しやすい形で整理します。
0. 「棘下筋 解剖図」で確認するときの見どころ
画像検索では、肩甲骨(けんこうこつ)の背面にある肩甲棘(けんこうきょく)の「下のくぼみ(棘下窩)」を広く覆う筋が棘下筋です。 腱は上腕骨の大結節(だいけっせつ)中部へ向かい、肩関節の後方で関節を支えます。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
1. 棘下筋の基本情報(位置・働き・日常動作)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | 肩甲骨の背面にある棘下窩(きょくかか:肩甲棘の下のくぼみ)を広く覆う三角形の筋。:contentReference[oaicite:2]{index=2} |
| 起始(きし) | 肩甲骨の棘下窩(+棘下筋膜)など。:contentReference[oaicite:3]{index=3} |
| 停止(ていし) | 上腕骨の大結節 中部(middle facet)付近(+関節包に連続)。:contentReference[oaicite:4]{index=4} |
| 主な働き |
①肩関節の外旋(腕を外へひねる) ②肩関節(上腕骨頭)を関節窩へ保つ安定化(ズレを抑える):contentReference[oaicite:5]{index=5} |
| 支配神経 | 肩甲上神経(suprascapular nerve)(主にC5–C6)。:contentReference[oaicite:6]{index=6} |
棘下筋が関わる「日常動作」例
- ドアノブを回す、ペットボトルのフタを「ひねって開ける」動作の一部(外旋の要素)。
- 髪を整える/背中に手を回すときの肩のポジション保持。
- 投げる・打つ動作(腕を引く局面や肩の安定化)で重要。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
- 長時間のデスクワークで肩が前に巻く(巻き肩)人は、肩後方の安定が弱くなりやすく、負担が蓄積しがち。
不調のサイン(参考)
棘下筋の過緊張(張り)やトリガーポイント(筋の硬結)では、肩周囲〜腕に関連痛が出ることがあり、痛みの出方が一定のパターンを示す研究もあります。:contentReference[oaicite:8]{index=8} ただし、肩の痛みは腱板損傷・関節包・頸部由来など原因が多様なため、強い痛みや夜間痛、挙上制限が強い場合は医療機関で評価してください。
2. 代表的な筋力トレーニング(初級〜上級)
棘下筋のトレーニングは「重さ」よりも、肩甲骨の位置(肩がすくまない)と上腕骨頭が前に滑らない感覚が重要です。 まずは軽負荷でフォームを固め、痛みがない範囲で段階的に強度を上げます。
| レベル | 種目 | 狙い・やり方(要点) | 目安 |
|---|---|---|---|
| 初級 | チューブ外旋(肘90°) |
肘を体側につけ、前腕を外へ開く。肩がすくむ・肘が離れるはNG。 「外旋=腕を外へ」だが、体幹が反らないように固定。 |
12〜20回 × 2〜4セット |
| 初級 | サイドライイング外旋(横向き外旋) | 横向きで肘90°、ダンベルを外へ回す。可動域を欲張らず、肩の後ろが使われる感覚を優先。 | 10〜15回 × 2〜4セット |
| 中級 | ケーブル外旋(軽〜中負荷) | チューブより一定負荷が作りやすい。肩甲骨は「軽く下げて寄せる」程度で固定し、腕だけで引かない。 | 8〜12回 × 3〜5セット |
| 中級 | 90/90 外旋(肩外転位の外旋) |
肩を90°外転、肘90°で外旋。オーバーヘッド動作の安定性に寄与。 負荷は軽めで、痛みゼロが前提。 |
6〜12回 × 2〜4セット |
| 上級 | フェイスプル(外旋入り) | ロープを顔へ引きながら外旋を足す。背中(僧帽筋中下部)と連動し、肩関節の安定に役立つ。:contentReference[oaicite:9]{index=9} | 8〜15回 × 3〜5セット |
| 上級 | 投球・打撃動作に近い外旋コントロール(段階導入) | スポーツ動作では、肩の挙上角度で棘下筋の活動特性が変わるため、角度を変えた外旋トレを段階的に導入する考え方が有用です。:contentReference[oaicite:10]{index=10} | フォーム優先(回数は少なめ) |
フォームの共通チェック(よくある失敗)
- 肩がすくむ:僧帽筋上部ばかり使い、棘下筋に入りにくい。
- 肘が体から離れる:外旋ではなく、腕全体の移動になりやすい。
- 腰を反って勢いで回す:体幹代償。負荷を下げて再構築。
- 痛みを押して続ける:腱板・関節包の炎症を悪化させることがあるため中止して評価。
3. ストレッチとケア(静的/動的)
3-1. 動的ストレッチ(準備運動:動かしながら整える)
| 種目 | やり方 | 目安 |
|---|---|---|
| 肩の外旋アイソ(軽い等尺) | 肘90°でチューブを軽く外へ押し、動かさず10秒保持。痛みのない範囲で「入る感覚」を作る。 | 10秒×3〜5回 |
| バンド・プルアパート | チューブを胸前で左右に開く。肩甲骨を寄せすぎず、胸を軽く張る程度。 | 10〜20回×2〜3 |
| ウォールスライド(肩甲骨の協調) | 壁に前腕を当てて滑らせ、肩甲骨が上方回旋する動きを引き出す。棘下筋は「肩の安定」に関与するため、周辺筋の協調が重要。:contentReference[oaicite:11]{index=11} | 8〜12回×2 |
3-2. 静的ストレッチ(クールダウン:伸ばして落ち着かせる)
棘下筋(肩後方)は、水平内転(腕を体の前で横切らせる)方向で伸びやすい傾向があります。 ただし肩の痛みが強い場合は無理に伸ばさず、可動域は「痛みゼロ」を基準にしてください。
| 種目 | やり方 | 目安 |
|---|---|---|
| クロスボディストレッチ | 腕を胸の前で横切らせ、反対の手で肘〜前腕を軽く引く。肩の後ろが伸びる位置で保持。 | 20〜40秒×2〜4回 |
| タオル補助の後方ストレッチ | タオルを使い、肩を痛めない範囲で後方組み動作を補助。無理に引かない(関節包に負担が出やすい)。 | 20〜30秒×2〜3回 |
3-3. セルフケア(筋膜リリース・トリガーポイントケア)
棘下筋は肩甲骨の背面に広く付くため、ボール(テニスボール等)での圧迫ケアが行われます。 トリガーポイント由来の関連痛パターンは研究でも報告されていますが、痛みの原因は多様です。:contentReference[oaicite:12]{index=12}
| 方法 | やり方 | 目安 |
|---|---|---|
| ボール圧迫(壁 or 床) |
肩甲骨の背面(肩甲棘の下)にボールを当て、痛気持ちいい点で20〜30秒。 「激痛まで押す」「しびれが出る」は中止。 |
2〜5点×各20〜30秒 |
| 圧迫+ゆっくり外旋運動 | ボールで軽く圧をかけたまま、腕を小さく外旋/内旋して可動を整える(痛みゼロの範囲)。 | ゆっくり6〜10回 |
4. まとめ(実務での優先順位)
- 棘下筋は肩の外旋と肩関節の安定化に重要な回旋筋腱板の一つ。:contentReference[oaicite:13]{index=13}
- トレーニングは「重さ」より肩がすくまないフォームと痛みゼロが最優先。
- 動的ストレッチで協調を作り、静的ストレッチとボールケアで張りを整える。
- 夜間痛、著しい可動域制限、力が入らない感覚が強い場合は、腱板・関節包などの評価が必要になるため受診を推奨。