五十肩(肩関節周囲炎)の時期別セルフケアと運動の考え方

投稿日:2025年12月8日  カテゴリー:肩の痛み

五十肩(肩関節周囲炎)の時期別セルフケアと運動の考え方

このページでは、五十肩(肩関節周囲炎)の代表的な経過と、それぞれの段階で意識したいセルフケアのポイントを整理しています。
ただし、最終的な診断と治療方針は必ず医師の判断を優先してください。運動療法は、可能であれば整形外科医や理学療法士の評価と指導を受けながら進めることを強くおすすめします。

1. 五十肩とは?

病態の概要 肩関節を構成する軟部組織(関節包・靱帯・腱など)に炎症が起こり、痛みと可動域制限が生じた状態を総称して「五十肩」あるいは「肩関節周囲炎」と呼びます。
経過の中で炎症がおさまっていく一方で、関節包や周囲組織の癒着・拘縮が進み、肩が「固まった」ような状態になることもあります。
好発年齢 一般的には40~60代に多く発症し、特に明らかな外傷がなく、徐々に肩の痛みや動かしにくさが出現します。
左右差 多くは左右どちらか一方の肩に起こりますが、時間差で反対側に発症するケースもあります。

2. 五十肩の3段階と特徴

五十肩は経過の中で大きく「炎症期 → 拘縮期 → 回復期」という3つの段階を辿ると説明されることが多いです(正確な経過は個人差があります)。

炎症期
  • 肩関節内の炎症が強く、安静時痛・夜間痛が目立つ時期。
  • 少し腕を動かしただけでも鋭い痛みが走ることがある。
  • この段階では「無理に動かさない」ことが最優先となる。
拘縮期
  • 炎症がやや落ち着き、夜間痛は軽減することが多い。
  • 一方で、関節包や周囲組織が固まり、可動域制限が顕著になってくる。
  • 「痛みは少し減ったが、肩が上がらない・背中に手が回らない」と感じる時期。
回復期
  • 痛みが徐々に軽くなり、可動域と筋力の回復が進む時期。
  • 適切な運動療法と日常生活の中での自然な使用により、少しずつ動きが戻っていく。
  • 完全な回復までには数ヶ月〜1年以上かかることもある。

3. 初期(炎症期)の対応:安静と痛みコントロール

炎症期は「攻める時期」ではなく「守る時期」です。無理に動かしたり、ストレッチを頑張りすぎると、かえって炎症を長引かせる可能性があります。

基本方針

  • 痛みが強く出る動作(高い所に腕を挙げる・急な外転・外旋など)は極力避ける。
  • 就寝時は、痛みのある側を上にしてクッションや枕で腕を支え、肩への牽引ストレスを減らす。
  • 必要に応じて、医師に相談のうえ鎮痛薬・注射などの薬物療法を併用する。

アイシング・安静

  • 熱感・腫れ感・ズキズキした疼痛がある場合は、1回15〜20分を目安にアイシングを行う(保冷剤はタオル越しに)。
  • 同じ部位を連続して長時間冷やしすぎないよう注意する。
  • 「痛みを我慢して動かす」よりも、「痛みを悪化させない」ことを優先する。

痛みの出ない範囲での軽い運動

  • 肩そのものを大きく動かすのではなく、肩甲骨の軽い可動域運動(すくめる・寄せる・下げるなど)から始める。
  • 深くゆったりした呼吸と合わせて、頸部・胸郭の緊張を軽減させる「呼吸運動」を行う。
  • これらはあくまで「痛みの出ない範囲」で実施し、違和感が強い日は中止・減量する。

炎症期にどこまで動かしてよいかは個人差が大きいため、可能であれば整形外科医や理学療法士に評価を受け、運動許容量の目安を確認してください。

4. 拘縮期〜回復期のストレッチ

炎症が落ち着き、夜間痛・安静時痛が軽くなってきたら、徐々に可動域を取り戻すフェーズに移行します。この段階でのテーマは「固まった組織を少しずつゆるめる」ことです。

ストレッチのターゲット

棘上筋・棘下筋・肩甲下筋 ローテーターカフの柔軟性を高めることで、肩の回旋動作をスムーズにする。
大胸筋・小胸筋 巻き肩姿勢の改善により、肩甲骨・上腕骨の位置関係を整える。
広背筋・大円筋 肩関節の挙上や内旋の制限を軽減し、挙上動作のスムーズさを高める。

代表的なストレッチ例

  • クロスボディストレッチ:片腕を胸の前に横に抱え、反対の手で肘を軽く引き寄せて、肩の後方組織を穏やかにストレッチする。
  • スリーパーストレッチ:横向きに寝て、下側の腕を前方に出し、肘を90度に曲げて前腕をゆっくり床方向へ倒し、肩後方の柔軟性を高める。
  • 壁這い運動(フィンガーウォール):壁に向かって立ち、指先を使って壁を「登る」ようにして、痛みの出ない範囲で挙上角度を広げていく。

ストレッチの具体的ポジションや方向が分かりにくい場合は、
「五十肩 ストレッチ」「肩関節 可動域回復」といったキーワードで画像検索やYouTube検索を行い、解剖図や動画を確認しながら行うとイメージしやすくなります。
ただし、見よう見まねで強く引き伸ばしすぎないことが重要です。

5. 拘縮期〜回復期の軽負荷トレーニング

可動域が少しずつ改善してきたら、肩を安定させる筋群の再教育が重要になります。いきなり重い負荷を扱うのではなく、ペットボトルやセラバンドなどを使った軽負荷トレーニングから始めます。

ターゲットとする筋群

  • 肩甲骨周囲筋:僧帽筋(中部・下部)、前鋸筋、菱形筋など。
  • ローテーターカフ:棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋。

エクササイズ例

  • ショルダー・エクスターナルローテーション(外旋運動):
    • セラバンドをドアノブなどに固定し、肘を体側に軽くつけた状態で前腕を外側に回旋する。
    • ローテーターカフ(棘下筋・小円筋)を主に狙う種目。
  • セラバンドを使った肩甲骨のリトラクション
    • 両手でバンドを持ち、胸の前で左右に引き広げ、肩甲骨を寄せる動きを意識する。
    • 僧帽筋中部・菱形筋の活性化に有効。
  • 軽いペットボトルを用いた前方・側方挙上(痛みの出ない範囲):
    • 水の入ったペットボトルなど、ごく軽い負荷から開始する。
    • 挙上角度は、医師や理学療法士から許可された範囲にとどめる。

動きや位置が不安な場合は、「五十肩 回復エクササイズ」「肩 ローテーターカフ トレーニング」などのキーワードで動画・解剖図を確認しつつ、必ず痛みの出ない範囲で丁寧に行ってください。

6. セルフケアを行う際の注意点

  • 可動域の無理な引き伸ばしは厳禁です。痛みを我慢して限界まで伸ばすと、組織をさらに傷めるリスクがあります。
  • 運動後に痛みが数時間以上続く、夜間痛が明らかに増悪する場合は負荷過多のサインと考え、内容・回数を見直すか一時的に中止します。
  • 「ストレッチ後に心地よい張り感がある」程度を目安にし、「鋭い痛み」「イヤな痛み」が出る手前で止めるように意識しましょう。
  • 日によって痛みや動きやすさが変動するため、「調子の悪い日は無理をしない」ことも大切なセルフマネジメントです。

7. 専門家の指導の重要性

五十肩は自然経過で改善していくケースも多い一方で、炎症の程度・拘縮の強さ・背景疾患によって適切な対処が大きく変わる疾患でもあります。

  • まずは整形外科で診断を受け、必要に応じて画像検査(レントゲン・MRIなど)を行うことが重要です。
  • 医師が示す「今は安静優先の段階なのか」「運動療法を進めて良い段階なのか」を尊重してください。
  • 可能であれば、理学療法士や公認アスレティックトレーナーの指導を受け、段階ごとのストレッチ・エクササイズを調整してもらうと安全性が高まります。
  • 自己判断のみで「強いストレッチ」や「高負荷トレーニング」に踏み込むことは避け、違和感があれば早めに専門家へ相談してください。

このページで紹介した内容は、あくまで一般的なガイドラインであり、個別の診断・治療に代わるものではありません
不安がある場合や、セルフケアを行っても改善がみられない場合は、必ず医師や理学療法士に相談のうえ、自分の状態に合ったプログラムを組んでもらってください。

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