腱板損傷の特徴と安全なセルフケアの考え方

投稿日:2025年12月9日  カテゴリー:肩の痛み

腱板損傷の特徴と安全なセルフケアの考え方

このページは、腱板損傷と診断された、あるいは疑いがあるクライアントが「どんなケガなのか」「どのような流れでリハビリを進めるのか」を整理するためのガイドです。ここで紹介する内容はあくまで一般的な情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。必ず整形外科医や理学療法士の指示を最優先し、その補助として活用してください。

1. 腱板損傷とは?

項目 内容
腱板(ローテーターカフ) 棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つの筋肉とその腱の総称。上腕骨頭を肩甲骨の関節窩に安定させる「肩のインナーマッスル」。
腱板損傷とは これらの腱のいずれかが、摩耗・変性・外傷などにより部分断裂あるいは完全断裂している状態。小さな部分損傷から、大きな断裂まで幅がある。
主な原因 加齢に伴う変性、オーバーヘッド動作の繰り返し(投球、サーブ、スイングなど)、転倒時に手をついた衝撃、重い物を急に持ち上げる動作など。
重症度による違い 軽度の部分損傷では保存療法(安静・リハビリ)で改善することも多いが、大きな断裂や症状が長期化した場合は手術が検討されることもある。

2. 症状とセルフチェックの目安

正確な診断は画像検査(X線・MRI・超音波など)を含めて医師が行う必要がありますが、よくみられる症状を整理しておきます。

症状 セルフチェックのポイント
腕を挙げるときの痛み 特に肩関節が90〜120度あたり(いわゆるペインフルアーク)で痛みが強くなる。ゆっくり挙げたときに、この角度付近で「ズキッ」とした痛みや重さを感じる。
夜間痛・安静時痛 寝返りを打ったときに肩が痛む、肩を下にして眠れない、じっとしていても疼くような痛みが出る。
筋力低下・引っかかり感 腕を横から挙げる・頭の上に持ち上げる・背中に手を回すときに、力が入りにくい、途中で「ひっかかる」ような感覚がある。
動作不良 肩の動きがスムーズでなく、代償として肩をすくめる・身体を傾けるなど、他の部位でごまかす動きが出やすい。

上記はあくまで一般的な目安です。強い痛みや機能低下がある場合は、セルフチェックにこだわらず速やかに受診してください。

3. まず取るべき対応

ステップ 内容
① 安静と保護 痛みを強く感じる動作(挙上・投げる・打つ・荷物を持ち上げるなど)を控え、炎症を落ち着かせる。必要に応じて三角巾やサポーターで一時的に安静を保つこともある。
② 医師による診断 整形外科を受診し、問診・徒手検査・画像検査(X線、超音波、MRIなど)を受ける。断裂の有無・範囲・周囲の組織の状態を確認する。
③ 自己流リハビリの禁止 痛みを我慢してのストレッチや筋トレ、ネット情報だけを頼りにした負荷の高いエクササイズは症状悪化のリスクが高い。必ず医師・理学療法士の許可を得た範囲で行う。
④ 痛みコントロール 医師の指示のもと、薬物療法(消炎鎮痛薬、湿布など)や物理療法(アイシング、超音波治療など)を組み合わせ、痛みと炎症を抑える。

4. 痛みが落ち着いたあとのストレッチ

急性期の強い痛みが落ち着き、医師・理学療法士から「軽いストレッチから始めてよい」と許可が出ている段階で実施を検討します。

4-1. 目的

  • 肩甲骨まわりと肩関節周囲の柔軟性を高め、腱板への局所的なストレスを減らす。
  • 肩甲骨の位置と動きを整え、上腕骨頭のスムーズな回旋・挙上をサポートする。

4-2. 重点となる筋・部位

部位 ストレッチの狙い
小胸筋 前方に引き出された肩を後方へ戻し、肩甲骨の後傾・外旋を出しやすくする。
肩甲下筋・大円筋周囲 内旋方向に硬くなりやすい筋群を緩め、外旋・挙上の可動域を確保する。
広背筋・胸椎周囲 猫背姿勢による肩の前方化を改善し、オーバーヘッド動作の負担を軽減する。
肩甲骨のモビリティ キャット&ドッグ、四つ這いでの肩甲骨回し、壁を使った肩甲骨はがしなどで、滑らかな動きを回復させる。

具体的なフォームやイメージが必要な場合は、「腱板損傷 ストレッチ」「ローテーターカフ ストレッチ」などで検索し、医療・リハビリ専門家が解説している画像・動画を参照してください。実施時は痛みのない範囲でゆっくり行い、強い痛みが出た場合は中止し、担当の医師・理学療法士に必ず相談してください。

5. 筋力トレーニング(段階的な進め方)

筋力トレーニングは「痛みがコントロールされ、可動域がある程度確保できた段階」から、専門家の指導のもとで始めます。

5-1. 初期:ローテーターカフの低負荷エクササイズ

内容 ポイント
ゴムチューブによる外旋・内旋運動 肘を体側に軽くつけ、肩関節の高さを変えずに、痛みのない範囲で小さく動かす。回数は少なめから開始し、疲労や痛みが出ないことを確認しながら徐々に増やす。
横向き外旋エクササイズ ベッドやマットで横向きになり、軽いダンベルまたは自重で外旋を行う。代償として肩をすくめないよう注意。
等尺性収縮トレーニング 壁や手で軽く押し合うなど、関節を動かさずに筋肉に軽い緊張を入れる方法。術後や痛みが残る段階で有効な場合もある。

5-2. 中期:肩甲骨安定筋群の強化

  • 前鋸筋:ウォールスライド、プッシュアッププラスなど。
  • 僧帽筋下部:Yレイズ、ベンドオーバー姿勢での腕上げなど。
  • 菱形筋:ローイング系エクササイズ(チューブ・マシンなど)を痛みのない範囲で実施。

これらの筋は、肩甲骨を適切な位置に安定させ、腱板への負担を軽減する役割を持ちます。

5-3. 後期:コンパウンド動作への移行

種目例 留意点
シュラッグ、軽めのサイドレイズ、アームリフト 正しいフォームで実施し、痛みが出ない重量・可動域からスタート。オーバーヘッドプレスなど高負荷の挙上種目は、医師・理学療法士のOKが出るまでは控える。
スポーツ特異的な動作(投球・サーブなど)の準備運動 テクニック練習に入る前に、肩甲骨・体幹・股関節を含めた全身連動のドリルを行い、局所に負担を集中させない。

6. セルフケアでの主な注意点

注意点 具体的な内容
無理な挙上・負荷をかけない 痛みを我慢して腕を高く挙げる、重いダンベルやバーベルを使う、勢いをつけてストレッチすることは避ける。
痛みの質・強さの変化を観察 「筋肉の張り」のような軽い違和感なら様子を見ることもあるが、「鋭い痛み」「夜間痛の悪化」「可動域の急な低下」があればすぐに中止し受診する。
動作コントロールを優先 筋力トレーニング以前に、肩甲骨と上腕骨の協調運動をスムーズにすることが重要な段階も多い。フォームを丁寧に確認する。
左右差の把握 患側と健側の可動域・筋力・疲労の出方の違いを把握し、過負荷にならない調整を行う。
全身のバランス 胸郭・体幹・股関節の硬さや弱さも肩の負担につながるため、上半身だけでなく全身のコンディショニングを行う。

7. 専門家への相談・介入の重要性

  • 腱板損傷は、損傷範囲や年齢、活動レベルによって最適な治療方針が大きく異なる。
  • 医師による定期的な評価(画像再評価を含む)が、保存療法を続けるか、手術を検討するかの判断材料になる。
  • 理学療法士やアスレティックトレーナーは、回復段階に応じた運動プログラムを設計し、フォーム修正・負荷調整を行う役割を担う。
  • 症状が3か月以上大きく改善しない、日常生活動作が著しく制限される、筋力低下が進行している場合などは、治療方針の見直し(リハビリ継続か手術検討か)を専門家と相談する。

腱板損傷のセルフケアで大切なのは、「自己判断で無理をしないこと」と「医師・理学療法士と連携しながら、自分の体の状態を理解していくこと」です。適切な安静・ストレッチ・筋力トレーニングを段階的に組み合わせることで、肩の機能回復とスポーツ復帰に近づいていきます。

Affiliate Disclosure

当サイトは、Amazonアソシエイト・プログラムおよび各種アフィリエイトプログラムに参加しています。 当サイト内のリンクにはアフィリエイトリンクが含まれており、適格販売により収入を得る場合があります。